黒塗りの答案用紙
五來 小真
黒塗りの答案用紙
学校でテストの答案用紙が話題になっていた。
ご丁寧に、真っ黒に塗りつぶされていたのである。
よくよく見ると、文字が白く浮かび上がっている。
解答が書かれていたのだ。
一回書いた上で、塗りつぶしたわけだ。
なぜこんなことをしたのか?
「学校教育に対するアンチテーゼ?」
「教師に対する個人的な恨みかもしれない」
「全てを呪いたい——とか?」
教師の間で話し合ったが、結論は出なかった。
本人に聞こうということになった。
しっかり名前も一度書いて消していたので、特定は簡単だった。
「——どうして黒く塗ったんだ?」
「『この問いの空欄を埋めなさい』ってあったから。埋めるって、こういうことでしょ?」
「一度答えを書いていたようだが?」
「解釈違いの可能性があったので。わざわざ選択肢まであったわけだし。でもそうだとするなら、『適当と思われる選択肢を選びなさい』が妥当だと思うんだよなぁ」
理由はこれでわかった。
しかしこれで話は終わらない。
テストの点数をどうするか?
この生徒の浮かび上がった答えが、てんでデタラメであれば話は早かった。
しかし有効にした場合、学年トップの成績になるのだった。
「無効にしましょう。あんなふざけた答案を、通らせるわけにはいかない」
「しかしあの生徒言うことにも一理あるのでは? 確かに日本語として問題文がおかしいような」
「他の生徒は、ちゃんとやってるんですよ」
「他の生徒が出来ているから、問題文が正しいと言えないのでは?」
教師としてのメンツと、生徒の成績を正しく評価しようという動きと、そして問題文の正当性を見極めようという動きがあった。
それぞれ評価軸が違っていた。
結局、今回は大目に見たうえで注意し、次回から無効という判断に落ち着いた。
問題文を直そうという動きは起こらなかった。
<了>
黒塗りの答案用紙 五來 小真 @doug-bobson
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