第6話 伯爵と雨呼び歌声の杖-囁きの占い師シノミヤ-

最近はリアさんとよく遊ぶようになった。

ちょっと元気すぎる? みたいなところもあるが、引っ込み思案の私にとっては純粋に嬉しいことだった。

「ねぇ、そこの貴方」

「私、ですか?」

私と同じ黒を基調にしたフード付きローブ、アクセントは紫。

鮮やかな黒曜石のような黒と紫の中間色の髪色のセミロングに、少し私が警戒心をもってしまうような妖艶な笑み。

手にしたコレクトブックには、半透明の水晶が浮かんでいる。

「私はシノミヤ、Arcano Duskの中で占い師をしているの、今馴れるために無傷で声をかけていて、少しだけどう?」

「……、まぁ、少し、だけなら……」

──人の誘いを断るのは心底苦手だ──


「なんて呼べばいいかしら? ミッシェルちゃん?」

「ちゃんなんて呼ばれるよう年齢でもないと思いますが……」

「嫌じゃないなら続けるわね、最近新しいお友達が出来たようね、その子の名前はリア、貴方はその子を──」

「──やめてください、こんなの占いでもなんでもありません、なんなんですか」

「前に貴方がリアさんといるのを見かけたの、よければ紹介していただけかしら? 嫌なら嫌で直接お近づきになるだけなのだけれども」


「私が勝ったら、私とリアさんに関わろうとしないでください」

「ええ、勝てたら、ね」


──The Datacore awakens! ──


1stPlayer Turn1:ミッシェル

「“歌声港の吟遊詩人”をアウェイクします」

コア3/パワー2/破壊時、歌声カード1枚を探してデッキの上に置く。


2ndPlayer Turn1:シノミヤ

「ポケットをコアチャージ、カードを1枚インタラプトして、ターン終了」

「最初のターンにインタラプトだけ? セオリーから逸脱したプレイをするんですね?」

「私にとってはこれがセオリーなの、問題ないわ」


TURN1 SCORE

ミッシェル:コア3.ポケット2.障壁2.

シノミヤ:コア3.ポケット3.障壁2.

ミッシェル:“歌声港の吟遊詩人”/シノミヤ:なし


1stPlayer Turn2

「ポケットをコアチャージ、カードを1枚インタラプト、吟遊詩人で障壁に攻撃」


──インタラプトアウェイク──

「“月光国の密約”インタラプトアウェイク」

4コア/攻撃を無効にし、障壁1つに1ダメージ。


「密約によって標的は貴方の障壁に変更させてもらうわ、いきなさい、吟遊詩人」

ミッシェル:障壁耐久2→1


「そんな小細工カードをこんな前半で使いますか? 普通」

「結果から目をそらさないことね、先制ダメージを私が与えたことは揺るがないのだから」

「……まぁいいでしょう、“歌声港の聖歌隊”をアウェイクします」

4コア/パワー2/破壊時、1ドロー。


2ndPlayer Turn2

「ポケットをコアチャージ、カードを1枚インタラプトして、このターンも終了」

「……挑発してますか?」

「可愛いお顔なのに怖いこと言うのね」


TURN2 SCORE

ミッシェル:コア4.ポケット0.障壁2.

シノミヤ:コア4.ポケット2.障壁2.

ミッシェル:“歌声港の吟遊詩人”.“歌声港の聖歌隊”/シノミヤ:なし


1stPlayer Turn3

「ポケットをコアチャージ、吟遊詩人で障壁に攻撃します」


──インタラプトアウェイク!──

「“月光国の内乱指揮”インタラプトアウェイク、今度は吟遊詩人の攻撃を聖歌隊へ!」

5コア/攻撃エレメントは指定したエレメント1つにアタックする。

Result:

“歌声港の吟遊詩人”破壊

“歌声港の聖歌隊”破壊


──次は相打ちログカード……、でも相手の勝ち筋がまだ見えてこない……──

「2体の破壊効果“デッキトップへのサーチとドロー”のコンボで“雨呼び歌声の杖”を手札に加えます」

6コア/パワー1/“耐久3”

ログカードコスト−1。

自分のターン終了時、このターンに自分が使用したログカードの枚数だけ1つにダメージを与える。


「5コアしかない今の貴方にはその杖を握ることは出来なそうだけれども、それでもいいの?」

「……問題ありません、さらに“天恵”をインタラプトアウェイク、3枚引きます」

6コア/3ドロー


「カードを1枚インタラプトして、ターンエンドです」


2ndPlayer Turn3

「ポケットをコアチャージ、カードを1枚インタラプトしてターンエンド」


TURN3 SCORE

ミッシェル:コア5.ポケット3.障壁2.

シノミヤ:コア5.ポケット1.障壁2.

ミッシェル:なし/シノミヤ:なし


1stPlayer Turn4

「ポケットをコアチャージ、カードを1枚インタラプト、ウェポンカード“雨呼び歌声の杖”をアウェイク、そのまま杖を持った私で障壁にアタック」

6コア/パワー1/“耐久2”

ログカードコスト−1。

自分のターン終了時、このターンに自分が使用したログカードの枚数だけ1つにダメージを与える。

シノミヤ:障壁耐久2→1


──インタラプトアウェイク!──

「初ダメージおめでとうミッシェルちゃん、でも“月光伯爵の策略術”インタラプトアウェイク、月光カードを改めて2枚インタラプトさせてもらうわね」

6コア/デッキからコア4以下の“月光”ログカードを2枚をインタラプトする。


2ndPlayer Turn4

「お待ちかねのエレメントカードの登場よ」

「ポケットをコアチャージ、“ダミーコア”をアウェイクして、“月光伯爵クロノルナ”アウェイク」

コア7/パワー4/

“策術2”-場の“月光カード”の枚数に等しい回数、好きな障壁にダメージを与える。

黒の契約:汝契約の時あらず


まるでフランス人形かのようなウェーブのかかった金の長髪に青い瞳。

それとは対照的に紳士的な黒コートに身を包み赤いステッキをつくすました少女。

「策術のコストで、私のインタラプトを表向きにして、クロノルナの効果!」

「……今貴方の場に“月光”カードが1枚だから私の障壁に1ダメージ、ですか?」

「いいえ、策術のコストで表になったインタラプト2枚も全て“月光”カード、つまりミッシェルちゃんの障壁に、1ダメージを3回与えるわ!」

ミッシェル:障壁枚数2→0


「おいおい、一気に3ダメージはやべぇってっ!」

聞き慣れなれない第三者の声に振り向くと見知らない赤髪の男子と、見知った友人、リアが少々驚きの表情で私の試合を観ていた。

「ミッシェル! ってなんで戦って!?」

「っ! リアごめん、私──」

「──お近づきになる手間が省けたかしら? ミッシェルちゃんにとどめをさしたら次は貴方よ、リアちゃん」

「そうはさせません、友達が見てくれてるんです、まだ負けられません」

「迅速を得たクロノルナで、ミッシェルちゃんへリーサル!」


──インタラプトアウェイク!──

「“迷い霧の歌声”をインタラプトアウェイク、クロノルナの攻撃を無効にします」

2コア/攻撃を一度無効にし、1ドロー“魂唱:歌声1”


TURN4 SCORE

ミッシェル:コア6.ポケット2.障壁0.

シノミヤ:コア6.ポケット0.障壁2.

ミッシェル:なし/シノミヤ:“月光伯爵クロノルナ”


「私の障壁の総耐久は3 、私を倒すにはこのターンで4枚のログカードを使う必要があるのよ、インタラプトに1枚しか置けていないミッシェルちゃんに、それが出来るとは思えないけど?」


「まず1枚目“高速詠唱”アウェイク」

2コア/ターン中、手札、インタラプトのログカードは全てインタラプトアウェイク出来る。


「……本来であれば相手ターンに何枚かのカウンターカードと併用するカード、それを自ターンに打って何になるのかしら?」

「こうするんですよ! ポケットから“彼方通しの歌声”アウェイク」

3コア/デッキから歌声ログカードをインタラプトする。“リフレクト”


「いいですか? “彼方通しの歌声”も“歌声ログカード”なんですよ、つまり私がインタラプトするのは“彼方通しの歌声”」

「すごい、すごいわミッシェルちゃん」

「そして“高速詠唱”の効果でそのまま“彼方通しの歌声”をインタラプトアウェイク! このまま同じ手順をあと1回目踏みます」

「これで、私がこのターンに唱えたログカードは“高速詠唱”と3枚の“彼方通しの歌声”の4回、覚悟してください」

「これで終わりです、テンペストストーム!」

シノミヤ:障壁2→0→リーサルダメージ


ーーGame set.Winner ミッシェル!!!ーー


「か、かてたぁ……」

コレクトブックを閉じ、思わず力が抜けてその場にへたり込んでしまう。

「すごいすごい、ナイス逆転劇だったよミッシェル!」

「あぁ、3ダメージの返しに4ダメージでリーサル取っちまうんなんて中々の“煌めき”だったぜっ!」

「ありがとうリア、と、だれ……」

「あぁ、この人は──」


「──お友達とお話中のところいいかしら?」

「──なんですか、約束覚えてますよね?」

「リアちゃんにご挨拶させてくれてもいいのではなくて?」

「私に、ですか?」

「ええ、私はシノミヤ、本当は貴方ともお話ししたかったのだけれども」

──まぁいいわ、リアちゃん以外にも“適合者”たりえる候補も新しく出来たことだし──

「約束通り邪魔なおねえさんは退くとするわ、また会いましょうね」

それだけ言い残し、シノミヤさんはログアウトしてしまった。


コレクトブックのお知らせ欄に新たなイベント予告が掲載されたのはその日の夜のことだった。


──レイドイベント:ダークカード──

イベントモードでは、専用の“ダークカード”を使うNPCとマッチングします。

プレイヤーが倒したNPCの総合数の数だけ、イベント終了時の景品が豪華になります。


「ダークカードだって、なんかアニメみたい! 新しいカードわくわくするね!」

新しいイベント予告にご満悦のリア。

──ダークカード、私も興味はあるけど、なんだかあんな不思議な人と戦ったその日の夜にこんな挑戦的なイベント、少し引っかかりを感じるけど──

「そうだね、一緒にがんばろ、リア」

リアと軽い雑談を終え、私もログアウトした。

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