第1章 王位継承の資格 王に謁見 2

 

 リンネは自分が育った今までの話をした。

両親はとても可愛がってくれたこと。中学生になってすぐに里子だと聞いたこと。本当の両親のことを知りたかったこと。全て思うままに話した。


王は王太子夫婦のリンネへの思いと事故のことをリンネに話さない訳にはいかないと思った。それして王太子はリンネが産まれたことを喜んでいたことを懐かしく遠い眼差しで話した。


まだ赤子なのにこれからの王女教育と王位継承のための計画を考えていた。王太子は自分の教育が厳しく辛かったので、そんな思いはさせたくなかった。だからこそ困らないように前もって、解りやすい教育の準備をしていた。


まさかこんなに早く王太子が馬車もろとも崖から落ちるとは思わなかった。事故の検証は王太子夫婦の体に鋭利な刃物で切られたあとがあったと。犯人を突き止める捜査をしたが、事件は闇の中で未だに解決していない。


リンネは会いたかった両親が、亡くなっていると聞かされて寂しく悲しい想いが込み上げていた。

その様子を見て王は、リンネの将来のことを考えていた。


「リンネや、そなたは、もう年頃だ。アーサー・ウインター侯爵と結婚して幸せになって欲しい」

「年頃とは、私はまだ15才ですよ」

「この国の成人は男女共に15才だ。いつでも結婚できる」

「え、そうなんですか。でも会ったばかりで急には」

「まあ、出来るだけ早く心の準備をしてほしい。だが急ぎ過ぎて心がない婚礼になっても不憫だ。考える時間を少しおいても遅くはないかもしれないな」

「はい、まだってことで、お願いします」


アーサーがリンネに小声で言った。


「私はいつでもいいですよ。明日でも心の準備はできています」

「ありがとう。もう少しお待ちください」

「まず王位継承のための教育をしてもらおう」

「難しいんですか?」

「そなたなら難なくできるだろう。王太子は優秀だったから、その血を引き継いだのだ」

「いやいや、自信がありませんので、お手柔らかに」

「はっきりとものを言うのは皇太子そっくりだ」


王はリンネのコロコロ変わる表情が可愛くて笑った。そんな喜びは愛しい孫を目にしてひとしおだった。


だが王弟の家族はいい顔をしていない。王位継承が自分たちのもとにあるはずと思っていた。それを横から取り上げられてしまうのだ。そんな気も知らずに王は迷いなく言うのだった。


「王位継承はそなたリンネが継承すること望む」


王弟は慌てた。この状況で察しはついていたが、言葉にされると失望する。その表情は恐ろしい程の悪意を滲ませていた。欲の塊で権力を手にすることが望みだったからだ。


「お待ちください、王よ」


王弟が激しい口調で言う。


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王女の品位 神地 香里 @kaori_kamiji15

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