第1章 王位継承の資格 王に謁見 1
王に会うため謁見の間の扉の前だった。アーサーとリンネは扉を見上げて立っていた。その重厚な扉はいかにも王宮らしい豪華な物で、リンネの決意が挫けそうになった。
緊張で足が動かない程だ。その緊張感は半端ない。その様子を見てアーサーが優しい口調で言った。
「大丈夫ですよ。私が付いています」
「はい、ありがとう。でも足がいうことききません」
「ふふ、可愛いですね。貴女らしい。何があっても貴女から離れませんよ」
「ありがとう」
アーサーの言葉が嬉しかった。得体の知れない全てのものが恐怖を感じる中、味方がいる心強さを感じた。リンネは笑顔でアーサーを見た。するとアーサーも微笑み言う。
「貴方は笑顔が可愛いですよ」
リンネは顔が火照って真っ赤になっていた。イケメンに言われた一言といい、微笑みといい、破壊力があるのだ。心が動かずにはいられない。ドキドキしながら心を鎮めようと思っていると緊張がほぐれていた。
「行きますか」
「はい」リンネは力強く答えた。
分厚い扉の両側に近衛兵士がいてアーサーが合図をする。すると扉はゆっくりと開いた。正面の3段上にある王座に年老いた王が、鎮座しこちらに注目していた。
赤い絨毯が王に向かって伸びていて左側に王より少し若いが、初老の夫婦とその子共である兄妹が、悪意が感じる程の表情で立っていた。
赤い絨毯の途切れた最も王に近い位置まで行き、アーサーは挨拶をして騎士らしい礼をした。それに続いてリンネも中世の映画の貴族が王にする礼をした。それは両手で左右のドレスのスカートの端を掴み少し上げて、頭を下げた。
見よう見真似でやった礼はぎこちなかったが、敬意は伝わったと思った。それは王の眼差しが愛情のこもったものに感じたからだ。
「さあ、面を上げて、顔を見せておくれ」
アーサーがリンネに顔を上げるように手で合図した。そして顔を上げた。
「おうおう、母親似の美しい顔だ。髪と瞳は息子に受け継がれた。特に瞳は我が息子の意志の強さが似ている。アーサー・ウインター侯爵、よく連れて来てくれたな、礼を言うぞ」
「滅相もありません。私とて婚約者である王女を探し当てることは、当たり前のことです。詳しい出生のことは話していません。王からご説明の程お願いいたします」
「ああ、分かった。リンネと言う名だと聞いている。本当の名はリネアと言う名だ。偶然にリンネもリネアも同じ花の名前だ」
王は長い話を始めた。王の息子の王太子は、ひとり息子だった。王妃である母親は病弱だったせいで、幼い王太子をおいて亡くなった。その後は王妃を娶らず、王太子を大事に育てた。
とても優秀な息子に早いうちから王権を渡そうと思っていた。その矢先に事故で王太子夫婦を亡くしてしまった。
幸い孫がいたので王位継承は、その子が成長してから渡すつもりだった。それが孫のアイネが、まだ赤子の時に誘拐され行方不明になったのだった。
王は血眼で探した。自分の王であるうちに探しあてたいと思ったが、なかなかみつからなかった。
だが幼い頃から婚約者だったアーサーが捜索隊に名乗り出てくれたため、やっとの思いでみつけてくれたのだった。王の喜びは愛しい孫を目にしてひとしおだった。
王はリンネに今までどんな生活をしてきたのか聞いてきた。リンネはそれに答えた。
「両親は子供が出来ず、施設から私を引き取ってくれました」
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