痛みも赦しも描く異世界ホームドラマ!!

この物語、正直「異世界転生もの」の皮をかぶった、めちゃくちゃ骨太な人間ドラマだった。
まず冒頭からいきなりDV家庭、アル中親父との壮絶なケンカ。「包丁で切られると本当に痛い」――この一文でもう心掴まれた。マンガやラノベの「熱かっただけ」みたいな甘っちょろい世界じゃなくて、本気で痛くて、血が出て、体が震えるリアル。生々しくて、読んでて自分まで体が強張る感じ。

そして、地獄の裁判官みたいなスーツの女に「罪人」として異世界に送り込まれる主人公。これもまた普通の「チート転生」なんかじゃなくて、痛みも苦しみも消えない呪い付き。回復はするけど、苦しみはしっかり味わえっていう鬼畜仕様。
「何このハードモード!?」って、思わず突っ込んでしまった。

森に全裸で放り込まれ、包丁一本でサバイバル開始。死体から服や靴を調達し、ワインで喉を潤し、ベーコンを焚き火で焼いて食う――この“生き延びるしかない”感、すごく良い。五感の描写が細かくて、読んでるこっちまで湿気や土の匂い、汗やベーコンの塩気が伝わってくるみたいだった。

そして麻袋の中から出てきた那由多ちゃん。これがまた一筋縄じゃいかない。見た目は可愛いのに、下半身がまさかの“狼の群れ”! 「え、どういう構造!?」って思わず笑いそうになったけど、本人はいたって真面目で、言葉づかいも丁寧。
このギャップと、“異世界らしさ”がほんと面白い。

でもここで終わらない。夜になって、森の怪物に襲われて生きたまま皮を剥がされる…地獄すぎる。痛みと恐怖の描写がリアルで、「もうやめてくれ…」って本気で思った。だけど、その怒りが“呪いの炎”となって噴き出すシーンはめちゃくちゃカタルシス! 理不尽な暴力にさらされてきた主人公の「絶対生き残ってやる」って執念、アドレナリンの暴走、鬼気迫るものがあった。

そして復讐に走り、山賊たちを火だるまにして、全て燃やし尽くす。だけど憎しみの先に待っていたのは、思いがけない「赦し」と「家族」
死んだはずの那由多たちが、実はアンデッド一家で全員ピンピンしてて、「えっ、ギャグ!?」「なんだこの愉快なファミリー」って笑ってしまった。でも、その明るさや「人外だけど家族」という温かさに、ふっと救われる。

この作品、序盤はとにかく痛くて苦しいのに、終盤は不思議と心が軽くなる。那由多の「花が咲くような笑顔」や、メガロマニア家のアホみたいな明るさに、主人公も読者もどこかホッとする。
異世界での“居場所”とか、“自分を受け入れてくれる誰か”ってテーマも静かに効いてて、ただの異世界無双とはまるで違う。

おすすめポイントは――

* ご都合主義を一切感じさせない、超リアルなサバイバル描写
* イカれたほど濃いキャラクターたち(特にアンデッド家族!)
* 痛み・怒り・絶望から、赦しと家族の温かさへの大転換

逆に、「しんどい話は無理」「虐待・暴力が苦手」って人にはキツいかもしれない。でも、そこを乗り越えて読めたら、間違いなく心に残る。最後の那由多の笑顔が、なんか救いになって、「ああ、読んで良かった」って思えるはず。

テンプレ異世界転生に飽きた人、しっかり“痛み”や“怒り”のある物語を探してる人に、とにかく一度読んでほしい。
この主人公と家族の未来を、もっともっと見てみたくなる一作だった。
後は、新キャラのメイドちゃんがどれだけイカレキャラになるかが見物!