なぜいつでも料理を作っているのだろう
蜜柑桜
「好き」を語ろうと思いついたら、これが出てきた。
「推し」
なんだか縁遠い言葉です。
なぜかといえば、なんとなく現代用語に疎い自分なので、そして職業柄もあってかなるべく崩れた言葉を使わないように心がけているので、「好き」は述べても「推し」という言葉を使うのは抵抗がありました。
最近、やや薄れてきまして。
この自主企画で「推し」と見て、はてなんだろうと考えてみる。
たくさんあるのですけれど、果たしてエッセイに書くほどの「好き」を連ねられるものがあるだろうか。
小説を書く——カクヨムにいる方々はほとんどがそうでしょう。
仕事が好き——面白みがない上に、仕事のことは公に書きにくい。
有名人が好き——好きな有名人はいますが(オーランド・ブルームとか、イアン・マッケランとか、トールキンとか)、待てお前は指輪物語を語れ、となってしまいます。それでは指輪物語が語れるかと言えば、これはまずトールキンの素晴らしい美しい英語を堪能してください。
それでは——? カクヨムの推し作家さん→たくさんいてどうしよう。好きな映画や書籍→ネタバレが…… 音楽→面白さは語り出したらキリがないですが、マニアック過ぎる。
他に好きなもの……毎日していて飽きないもの……とことんやるもの……料理かな。
料理の話をします。
料理をし始めたのは小学校。親が共働きでしたから。中学校の時には夕飯も作るようになりました。捻挫の左手でも中華鍋を振るっていました。高校になったらパン屋さんになるために調理師学校に行くか、大学受験をするかの二択で迷いました。この頃から学校帰りに食料品店で買い出しをして、ネギやら大根が飛び出た袋を手に、高校から帰宅する毎日。
結局大学受験をしたのち、入学祝いに頼み込んで買ってもらったのはフード・プロセッサーでした。そして節約も兼ねてお弁当の作成、両親が超絶忙しくなったこともあり、夕飯は私の管轄。
料理が生活の一部になっていました。
大学院に入って留学したのち、貧困学生の料理は……いえ、それもありますが、住んでいた場所の郷土料理やレストランのメニューが大して美味しくなかったのもあります。ケーキ屋さんもパリや日本のように満足のいくクオリティではないし……。
結論。作るか。
そして利便性と現地の調理器具低価格が相まって増えていく調理器具(奨学金が入りましたので余裕が出たのです)。ざっとラインナップをあげれば、秤(まず初期段階で手に入れた)、ワッフル・メーカー(オーブンの無い寮生活時に手に入れた)、種々のお菓子の型、ブレンダー、クレープパン……、クリーム絞り出し口……安価バンザイ。
さてこんな蜜柑桜ですが、なぜこんなに料理が好きなのかわかりません。
昔から外食をほとんどしない家だったこともあるのでしょう。市販品を食べて、満足しなくなりがちに。
たまには面倒臭いな、作るの、とも思うのですよ。でもお惣菜のショーケースを見て、サラダとか、和物とかを見ても、ローストビーフやサラダチキンを見ても、「家で作れるよな」と思ってしまうのです(毎朝のサラダチキンは自家製です)。たまに物産展などで珍しく買ってみても、「アミノ酸の味がする……」「塩辛い」「添加物な味がする」となってしまう。
そして上乗せされる物価高。
サンドイッチが大好きですが、専門店はもとよりコンビニのサンドイッチ、どどんと値段上がりましたよね。卵サンドやツナサンド、ハムサンドのようなシンプルなものでも三百円下らないのがほとんど。
卵サンドの具なんて卵茹でてマヨネーズと塩胡椒で和えれば……ついでにチーズをブレンドしたら美味しいかもしれない。マスタードでもいいかもしれない。あ、枝豆混ぜたらオシャレかもしれない。
ツナサンドはツナ缶を買いさえすれば……オリーブ刻んで入れたら塩気がアクセントかもしれない、魚だからディルを混ぜたら風味が上がるのでは……? シンプルなハムサンドとハーフにしてもいいかもしれない……
たまに照り焼きチキンサンドやローストビーフサンドとか惹かれたりするのですけれど、なんといっても我が家には自家製チキンがあります。近所のスーパーは輸入牛モモ肉100円台で売っていますのでローストビーフも即できます。
三百円?
百円で豪華サンドの方が、と思ってしまう。
とまあ、貧乏性と合併した料理好きなのですが、これが飽きない。
仕事に煮詰まったら、「夕飯の支度するか……」、書類作成の休憩を入れようとしたら、「おやつ作るか……」、休憩は料理か……散歩(を兼ねた食材の買い出しであることが多い)。
甘いものが大好きなのでパティシェのケーキを買ってくれば、とも思いますけれども、なかなか買ってきたケーキにすら満足しない。せっかくパティスリーのケーキを買うなら最大級の満足を得たいです。しかしなかなかお値段に見合う満足度を得られないのです。美味しいのだけれど。美味しいのだけれど! せっかくならばチェーンではない満足度が得たい!
ところが自分で作れば、そんなに第一級の味にならなくても「プロじゃないし」「日々のおやつだし」「材料費だけだし」「甘さを好みに加減できるし」「生クリームにリキュールプラスで贅沢味だし」「フルーツ載せ放題だし」以下略。おまけにお菓子作りは休憩=心の栄養。
美味しければいいってもんじゃ無いんです。
作っていると、材料は自分が知っているものだけ安全に入っているし、たびたび変わった味にして楽しめるし、中身は盛りだくさんで買えば千円、作れば半額以下、体も動かしてリフレッシュ。あと好きなものを好きなだけ。多すぎず大きすぎず、少なすぎず小さすぎず。
果物を切って載せて、その日の気分のクリームを載せたりシナモンかけたりハーブと合わせたり。
そして手を動かして、歌いながら泡立てたりして、どきどきオーブンの中で膨らむのを待つ。
そうしているうちに思い浮かぶのですよね。
あの書類、ここのところカットすればいいんだ。
企画書の体裁、フォントと箇条書き調整すればいいかも。
あの案件、方法を変えたらどうだろう?
ああ、あそこの英語はこっちの表現の方がいい。
思い浮かぶのですよね。
あの小説の出だし、こう始めよう。
主人公の過去にこういうもの入れたらいいのでは?
途中のエピソードにちょっと濃いシーン入れたいかも。
よし次の食事の場面のメニューこれで。
あ〜〜〜〜〜そうだこの言葉だ、あの空の色が変わっていく感じの時の感覚はこの言葉!
ああまた頭の中で喋り始めたこの主従。そうだこうだ。この人たちが門衛と会ったらこうだ。
恋愛偏差値底辺のイケメン女子ならこの行動はない。こっちだこっち。苦労せよ男たち。
ちっがうよ! このエンディングが最適解だ!!
つらつらと思い浮かんでくるのです。
さてつらつら書きました。
好きなのですよ。料理が。今日も仕事の区切りをつけたら、買い出し行って、それでも疲れていたので夕飯作って休憩です。
明日の朝ごはんは甘辛チキンを作ってあります。昼ごはん用にはきゅうりと大根の塩揉みを作り置きしてあります。おやつにはシフォンの残りがありますが、日曜日なのでチーズケーキを焼きたいです。
そうして明日もまた「作って」いたら、きっとその中で今書いているリレー小説や、長編続編や、書きたいなと思っている新作のアイディアも浮かぶのでは無いかと思います。
さて、明日は何を作ろうかな。
徒然なるままに、推しを語ってみました。
第二弾の料理語りマニアック・ヴァージョンはこちら。
なぜいつでも料理を作っているのだろう 蜜柑桜 @Mican-Sakura
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