異界の輪

影神

オクグリクダサイ



自然が好きだ。


具体的に言うのならば、


景色を見るのが好き。


虫はそれ程好きではない。


だから遠目で見るくらいが丁度良い。


自然に生えた植物が、長い年月によって成長し。


個々の表現で形や大きさを成す。


それを遠目で見るとでこぼこしていて、


そんな所が何だか可愛らしく思える。



だが。最近の自然は人工的な板で覆い尽くされ、


綺麗な緑色の景色は壊されてゆく。


茶色い命が剥き出しにされ、


残酷な世界が広がっている。



何処かの誰か。その誰かの祖先が守って来た宝は。


一瞬の利益や何かの意図によって。


儚くも奪われてしまった。



いつもの様に遠くの山を見ていた。


薄汚れた関係に疲れた時。


私はこうして自然に癒して貰う。



ふと、周りより秀でた場所と目が合う。


真ん中には空が映り。


間が空いているかの様に見えたが。


上の方は繋がっており、


まるで手を繋いでいるかの様だった。


トンネルだ。



暑さのせいか。疲れのせいか。


はたまた何かの力によって。


それがゆらゆらと動いてる様に思えた。



オクグリクダサイ



耳元で低い声がした。


一瞬周りを見渡したが誰も居ない。


腕を見ると鳥肌が立っていた。


きっと気のせいだ。



家に帰って明日に備えて寝る。


その繰り返し。


休日になっても何かがある訳でもなく。


また次の仕事の為に、


疲れた身体を休ませるだけ。


これを死ぬまで繰り返す。



人はそれを『人生』と呼ぶのだろうか。



生きる為に働き。働く為に生きている。



端的に見たら人生なんてモノはつまらない。


いつになっても解放される事は無く。


繰り返されるサイクルの中に居るしかない。


死によって解放され、死によって終わる。


何とも皮肉めいた灯火だ。



暗闇の中でぐちゃぐちゃと廻る思考の中。


携帯に表示された時間を見て溜め息を洩らす。


喉の乾きに応える様に水道へ向かい、


コップを出してコップに満たされた水を飲み干す。


再び布団に戻ろうとした時。


さっきまでは無かったモノがそこにあった。



無数の腕。


腕が床から生えて、手首を腕が掴む。


それが輪となって、大きな半円になっていた。



オクグリクダサイ



聞いた覚えのある声。


その声を聞いた時。


最初に聞いた時の映像が頭の中に映し出された。



大きな黒い2つの影がトンネルを造り。


ブツブツと小さな声で呟いている。


、、、。、、。、、、、。



オクグリクダサイ



はっ!


我に返った時。


それが何だったのか理解した。



目の前の異様な状況も。


今起きてる事も、特別な事だった。



私は後の事なんて考える事もせず。


腕の輪が消えない内にその中へと入る。






















オクグリクダサイ





































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異界の輪 影神 @kagegami

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