宵宮の霧が招くのは、異界の百鬼夜行
- ★★★ Excellent!!!
広島の山間にある小さな町で、少年は兄と弟とともに、祖父母のもとへと夏を過ごしに訪れた。
日本の原風景が残るその土地で、祖父に勧められて向かったのは、山の麓の神社で催される宵宮祭。
笛や太鼓の音、甘い綿飴の香り、幻想的な提灯の明かり。
夏の終わりの祭の風景は、懐かしさと賑わいに包まれていた──はずだった。
だが、境内の奥、社殿の裏に広がる白い霧。
その中から現れたのは、異様な大名行列。そして、名指しされる「五郎左衛門様」。
訳も分からぬまま駕籠へと乗せられた少年が辿り着いたのは、妖怪たちが集う異界の大広間。
百鬼夜行の主、神野悪五郎が告げる「勝負」とは?
冗談のようでいて、不気味で、どこか懐かしい──
これは、夏と幽とが交差する、少年の「ほんの少しだけ不思議」な体験譚。