第12話 偶然がつなぐもの
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映像がフェードアウトし、静寂が訪れた。
しばしの沈黙の後、マリアは尚子に向き直った。
「尚子の記憶、行動をもとにした未来予測シミュレーションが終了したわ。…これで分かった?」と言ってから一呼吸おいて、静かだが厳然とした声でこう言った。
「尚子が自分のメジャーで自分をどうは測ろうと否定はしないけど、自分のメジャーで他の人を測って押し付けると、自分以外の大切な人も失いかねないということよ。」
「…………。」
尚子はただぼんやりと、設定画面に移ったディスプレイを見つめ続けていた。
―マリアの研究室
どれくらいの時間がたったのか。
シミュレーターのはじき出した結果は、目を背けたくなる……いや、自分の過去と向き合わずにはいられないような結果だった。
尚子は改めて自らの人生を振り返っていた。
才能を引き出してくれた教師、導いてくれた教授、支えてくれた家族…。どれも
『偶然』の出会いだった。
そういった「偶然」の出会いのおかげで今の自分があることは確かだった。
そして、何よりその「偶然」が引き寄せた「幸運」により目の前の友人と巡り合うことができた。
「マリア、やはりあなたは天才だわ。ありがとう。」
尚子は微笑むと友人に短いが、心がこもっていることが分かる声色で礼を言っ
た。
「当然でしょ。誰だと思ってるの?」
まるで軽口のように返すマリアに、すかさず尚子が言い返した。
「神様、仏様、マリア様!」
それを合図にくすくすと笑い合う尚子とマリア。
遠目に見る二人の姿は、まるで米国時代の若き日の彼女たちが時を超えてそこに
並んでいるかのようだ。
クリスマスツリーのサンタクロースは、その二人を静かに微笑みながら眺めてい
た。
パラレル・ライフ・シミュレーター 本歌取安 @watasihatawasi
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