第32話 美咲vs沙也加 セーラー服レズバトルキャットファイト


# 血と汗と涙の舞台


青いマットの上で響く鈍い打撃音。


「離せよ!このクソ女!」


沙也加の右拳が美咲の左頬を捉えた。美咲は顔を歪ませながらも逆襲に出る。


「あんたこそ黙れよ!」

美咲は両手で沙也加の襟元を掴み、力任せに引き寄せた。


二人のセーラー服はすでにところどころ破れており、特に美咲のスカートの裾は無残に裂かれていた。


「先輩のことなんて全然知らないくせに!」


沙也加の怒号とともに膝蹴りが飛ぶ。美咲は咄嗟に体を捻って避けたが、その勢いで二人ともマットに倒れ込んだ。


「知らないのはそっちだろ!」

美咲が上から覆いかぶさるようにして沙也加を押さえつけようとする。

沙也加は足をバタつかせて抵抗しながら叫んだ。

「あの人のことを何にもわかってないのに勝手に好きになって……」


「うるさい!私は1年前からずっと想ってたんだぞ!」


激しい取っ組み合いの中で、美咲の爪が沙也加の腕に食い込む。血が滲み始めるのが見えた。


観客席からは女子生徒たちの悲鳴と息を呑む声が聞こえる。教師陣は呆然と立ち尽くしたまま動けずにいる。


「いい加減に認めろよ!」

沙也加が突然美咲の長い黒髪を掴んで引っ張り上げた。痛みで美咲の顔がゆがむ。


「痛い!やめろ!」


反撃に出た美咲は、沙也加の髪を両手で掴み返し、今度は自分の方へと引き寄せる。二人の頭部が近づき、次の瞬間—。


ガリッという音と共に美咲の右肩に激痛が走った。沙也加が噛みついてきたのだ。


「ギャアッ!」


思わず手を放す美咲。その隙に沙也加は身体を起こし、今度は美咲の胸元を狙って拳を振り下ろした。


セーラー服の前ボタンがいくつか弾け飛ぶ。


「もう許さない!」

沙也加の目に涙が浮かんでいる。


美咲も立ち上がり、両者の間に再び緊張が走る。どちらも一歩も引かない。


「あんたみたいな泥棒猫には絶対負けない」

美咲が吐き捨てるように言った。

「それはこっちの台詞だ」


二人の視線が交錯し、次の瞬間—


リング中央で激しく絡み合う二つの影。もつれ合うように倒れた二人は、今度は地面を転がりながら激しく揉み合い始めた。


「私の先輩……取らないでよ……」

泣きながら叫ぶ沙也加。

「取られる方が悪いんだよ!」

必死に答える美咲。


互いの背中に爪を立て、相手の服をさらに引きちぎっていく二人。汗と涙とわずかな血が混じり合いながら、少女たちの争いは続いた。


セーラー服はもはや原型を留めず、ただの布切れのようになっている。それでも二人は離れようとしない。


「負けない……絶対に……」

「こっちだって……」


観客席からはすすり泣きの声が聞こえ始めていた。教師の一人がようやく我に返り、「これ以上は危険だ!」と制止しようとした瞬間—


「触らないで!!」

「邪魔するな!!」


沙也加と美咲の声が重なり、教師を睨みつけた。


「これは私たちだけの問題なんだから!」

「そうだ!他の誰にも関わらせたくない!」


教師は言葉を失い、後退した。


リング中央で起き上がった二人は、最後の力を振り絞って互いに向かっていく。決着の時はまだ遠い—。


# 意地と涙の真剣勝負


息も絶え絶えになりながら立ち上がった二人。沙也加の左目は腫れ始めている。


「先輩が私を選ばなかったらどうする?」

突然の質問に美咲の動きが止まる。

「……そんなことありえない」


沙也加は不敵な笑みを浮かべた。「だったら……ここで証明してみろよ!」


次の瞬間、沙也加は美咲の胸元に飛び込み、セーラー服が破れた隙間から右手を入れ込んだ。


「キャアッ!」


驚いた美咲は反射的に身をよじらせ、沙也加の肩を強く押し返そうとした。しかし沙也加は既に指先で相手の柔肌を探っていた。


「ほらほら!これがお前の弱点!」

嘲笑いながら乳房を掴む。


「卑怯者!」


痛みと屈辱で真っ赤になった美咲だったが、すぐに反撃に出る。左手で沙也加の腰に触れると—


「おっと」


巧みに身をひねりながら美咲の腕を掴む沙也加。「その手じゃダメだね」


だが美咲は諦めない。今度は右手で相手の太腿内側を狙った。


「っ!?」


意表を突かれた沙也加が小さく呻く。美咲はそのまま手を這わせようと—


「させない!」


沙也加は慌てて身を捩り、逆に美咲の膝裏を蹴り飛ばした。


二人の攻防はさらに激しさを増していく。互いの急所を狙いつつも、決定的な一撃を与えることができないまま時間だけが過ぎていった。


「はぁ……はぁ……」

「くっ……」


汗と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、二人の瞳は燃えるような憎悪で満ちていた。


「こんなことで終わりにすると思うなよ」

息を整えながら美咲が言う。

「次こそは白黒つけてやる」

沙也加も負けじと言い返した。


リングサイドでは、誰かがポケットからスマートフォンを取り出し—


パシャリ


光を放つカメラのフラッシュが、疲労困憊の二人を照らし出した。


# レンズの向こう側


「なにしてるの!」


美咲が怒鳴ると同時にカメラを持つ男子生徒が逃げ出した。その手には一枚の紙切れが握られていた。


「待ちなさい!」

沙也加が追いかけようとするも、足がもつれて転倒してしまう。


「ふざけるな……」

悔しさで歯を食いしばる沙也加。その姿を見た美咲の表情が一瞬揺らいだ。


「……なんでそこまで必死なの?」

ぽつりと漏らした疑問に、沙也加は顔を上げる。

「当たり前でしょ……好きなんだから……」


その言葉に美咲の表情が変わった。少し考え込んだ後—


「実はね……私も昨日告白したの」


予想外の告白に沙也加は目を丸くする。

「え?でも先輩は……」

「保留だって言われた」

美咲は俯いたまま続けた。

「今日、答えを聞こうと思ってたら……あなたが……」


沈黙が二人の間に流れる。


「……ごめんなさい」

沙也加が先に謝った。「あなたの気持ちも考えないで……」


# 戦場の均衡


「言わないで!」


沙也加の叫びと共に繰り出された肘打ちが美咲の腹部を捉えた。


「グハッ」


よろめく美咲だったが、すかさず沙也加の脚を払う。バランスを崩した沙也加は片膝をつく形になった。


チャンスとばかりに美咲が伸しかかる。「これで終わりだよ!」


必死に防御する沙也加の右手が美咲の首筋を掴む。息苦しさに顔を歪めながらも美咲は手を緩めない。彼女の左手は既に沙也加の腰回りを這っていた。


「離せ!この変態!」


罵り合いながら二人の体が絡み合う。沙也加は膝蹴りで美咲の脇腹を攻撃し、相手を怯ませた隙に体位を入れ替えた。


「今度は私が上!」


馬乗りになった沙也加は容赦なく拳を振り下ろす。美咲の額から血が滴り落ちる。


「甘いよ」


美咲は咄嗟に腕を交差させて防ぎつつ、空いている方の脚を沙也加の背中へ回した。二人の体が密着する形になる。


「くっ……離れろ!」


沙也加が暴れるも美咲は離さない。逆に両腕で相手の肩を締め上げ始めた。


「ギブアップするなら今だよ?」


耳元で囁く美咲。しかし沙也加の目はまだ諦めていない。


「冗談!」


突然彼女は身体を弓なりにしならせ—

「なっ!?」


不意を突かれた美咲がバランスを崩した瞬間、沙也加は脱出した。そして素早く相手の背後に回り込む。


「覚悟しろ!」


両手を組んで美咲の喉元を狙う。危機を感じた美咲が振り向きざまに反撃しようとした時—


「おい!そこまでにしろ!」

突然現れた体育教師の声に、二人の動きが止まった。


# 鉄と砂の舞踏


「離せよ!このクソ女!」


沙也加の金切り声と共に繰り出された爪先が美咲の太ももをかすめた。短い悲鳴を上げた美咲は瞬時に反撃し、沙也加の長髪を右手で鷲掴みにする。


「痛い!やめて!」


必死に身をよじる沙也加だったが、美咲は手を緩めない。そのまま頭部を引き寄せると—


ガリッ!


沙也加の耳朶に噛みついた。


「ギャアッ!」


激痛に顔を歪める沙也加。だが彼女も負けてはいない。すぐさま身を翻し、美咲の黒髪を両手で掴み返した。


「これでおあいこ!」


引きずり倒される二人。もつれ合うように地面に転がる。マットに擦れる制服の音、肉が打ち付けられる音—そして二人の荒い呼吸だけが静寂を破る。


「もう……許さない……」


美咲が唸るように言いながら上半身を起こそうとした時—


「グッ!?」


予想外の衝撃に顔をしかめる。沙也加の噛みつき攻撃が美咲の肩口を捉えていた。


「痛いっ……やめてよ……」


涙ぐむ美咲。沙也加はなおも歯を食い込ませながら嘲笑う。


「先輩はこんな程度で音をあげないよ?」


挑発を受けた美咲は最後の力を振り絞り、沙也加を押しのけた。しかし勢い余って二人ともマットに仰向けになってしまう。


「次はどうする?」

「やってみなよ……」

二人の視線が火花を散らす。



観客席からはもはや誰も声を出さなくなった。ただ息を潜めて結末を見守るしかない。


# 鋼鉄の鎖骨(こうてつのろっこつ)


「この根性無し!」


沙也加の鋭い肘打ちが美咲の脇腹に突き刺さる。よろめいた瞬間を逃さず、彼女は美咲の長髪を両手で鷲掴みにした。


「痛っ!離してよ!」


悲鳴を上げる美咲だったが、沙也加はさらに力を込めながら自らもマットに身を投げる。二人の体が絡み合ったまま床を転がる音が体育館に響き渡る。


「降参するなら今のうちだよ!」

「絶対しない!」


美咲が叫ぶと同時に反撃に出る。沙也加の顎を狙った拳は空を切ったものの、代わりに相手の前髪を乱暴に掴んだ。


「きゃっ!」


沙也加が驚いた隙に、美咲は渾身の力でその頭を自分の胸元に引き寄せる。そして—


ガリッ!


沙也加の唇に噛みついた。


「んっ!?」


鮮血が一筋流れ出す。屈辱と激痛で沙也加の顔が歪む。


「お返しだよ……」

「この野蛮人!」


# 口元から滴る感情


「この野蛮人!」

激高した沙也加の叫びと共に繰り出された拳は美咲の頬を直撃した。しかし美咲は一歩も引かない。今度は彼女の方から沙也加の頭部を強引に引き寄せ—


ガリッ!


沙也加の首筋に噛みついた。


「ギャッ!」

悲鳴を上げて身をよじる沙也加。だが美咲はなおも噛み続け、ついには皮膚を破るほどの圧力を加えた。


「やめ……ろ…」

かすれた声で懇願するも、美咲は離れない。逆に力を強めながら、耳元で囁く。

「これで終わりだと思う?」


沙也加の目尻に涙が滲む。彼女は最後の抵抗として、美咲の鼻梁に向けて渾身の頭突きをお見舞いした。


「ぐっ!」


一瞬怯んだ隙に沙也加は逃れ、すぐに相手の口元に手を伸ばす。血に染まった自分の歯形を確認すると、彼女の顔に残忍な笑みが広がった。


「次はここだ」

宣言と共に彼女は美咲の唇を狙って噛みつこうとする。それを察知した美咲は慌てて身を捻った。


「させるか!」

二人の顔が至近距離で向き合う。お互いの呼気が混じり合うほどの近さで—


ガチン!


両者の歯がぶつかり合う音が響き渡った。


# 輪舞曲の終焉へ

沙也加の鋭い肘打ちが美咲の脇腹に突き刺さる。よろめいた瞬間を逃さず、彼女は美咲の長髪を両手で鷲掴みにした。


「痛っ!離してよ!」


悲鳴を上げる美咲だったが、沙也加はさらに力を込めながら自らもマットに身を投げる。二人の体が絡み合ったまま床を転がる音が体育館に響き渡る。


「まだ終わらないよ!」


体勢を入れ替えた美咲が覆いかぶさると、即座に沙也加の肩へと噛みついた。


「ギャアッ!」


皮膚を破る感覚と共に鉄の味が口腔に広がる。しかし沙也加もただでは転ばない。逆に美咲の手首を強く握り潰しながら、彼女の喉元めがけて頭を突き上げた。


ガツン!


鈍い衝撃音と共に二人の動きが一瞬止まる。互いの目に宿るのは憎しみか執念か――判断がつかぬまま再び殴り合いが始まる。


「これで終わりかと思わないで!」


今度は美咲の膝が沙也加の太腿を横薙ぎに打つ。バランスを失った彼女の首筋を狙いすました掌打が襲いかかった。


「そんなもの!」


寸前で腕を絡ませてきた沙也加によって攻撃は阻まれる。代わりに美咲の額へと鋭い爪が走り、紅い痕跡を刻みつけた。


「いい加減にしなさい!」

血の滲んだ傷を気にせず美咲は右手を振り下ろす。


# マットの上に散る真実


「どうして邪魔するのよ!」


美咲の絶叫と共に彼女の体が沙也加を巻き込んで床へと落下した。二人の体重がかかったマットが大きく凹み、衝撃が全身に伝わる。


「邪魔してるんじゃなくて……負けたくないの!」


沙也加が体を起こそうとするも美咲が全力で押さえ込む。逆に彼女の腕を背中に回し、関節技に持ち込もうとする。


「痛いってば!」


悲鳴を上げる沙也加。しかし次の瞬間、彼女は両足を美咲の胴体に巻きつけると、力任せにひっくり返した。


「きゃあ!」


今度は美咲が下敷きになり、沙也加が馬乗りになる。


「これで形勢逆転!」


勝ち誇った声と共に沙也加の拳が降り注ぐ。必死にガードする美咲だったが、一発が頬を掠めた。


「許せない……」


呟いた美咲は反撃に出る。両腕を沙也加の首筋へ伸ばし、締め上げながら自身の体を捻る。


「ぐっ……はぁっ……」


窒息しかける沙也加は本能的に美咲の胸元を掴み、引き離そうとする。二人の体が激しく絡み合いながら再び床を転がり始める。


「先輩のこと……諦められないの!」


「私だって同じだよ!」


互いの本心が露呈した瞬間、二人の動きが僅かに鈍る。それを見逃さず沙也加が渾身の一撃を放とうとした時—


# 血と汗の境界線


「何やってるのよ!恥ずかしいと思わないの!?」


沙也加の罵声と共に彼女の足裏が美咲の肩甲骨を蹴り上げる。しかし美咲は痛みを堪え、逆に相手の腰に両腕を巻きつけた。


「あなたこそ先輩のことを何も分かってないじゃない!」


叫びながら力任せに沙也加を引き倒す。二人の体がもつれ合いながら床を滑っていく音が体育館内に響き渡る。


「ふざけないで!」

沙也加が起き上がり様に美咲の顎先めがけて頭突きを放つ。命中と同時に鈍い音がした。

「がはっ……!」

よろめいた美咲を沙也加は容赦なく押し倒す。

「これで決まりね!」


勝利を確信した彼女が体重をかけようとした瞬間―

「そうはいくか!」

美咲が突然両足を跳ね上げ、沙也加の顔面を挟み込んだ。

「うぐっ!」

体勢が入れ替わり、今度は美咲が上に乗る形となる。

「私だって諦めないんだから!」


激昂した彼女は相手の首を絞め上げ始めた。

「いやぁっ!離して……」

苦悶の表情を浮かべる沙也加だが、次の瞬間思い切り美咲の股間めがけて膝蹴りを入れる。

「うっ!?」


突然の衝撃に美咲は拘束を緩めてしまう。そこへ沙也加の掌打が側頭部に炸裂した。

「お返しだ!」

互いの体液―汗や涙が交じり合う中で二人の攻防はさらに激しさを増していく。


# 果てるまでの道

「先輩のこと何も知らないくせに!」


沙也加の叫びと共に彼女の指が美咲の柔肌を引っ掻く。鮮血が滴るのを見て、美咲の瞳に殺意にも似た怒りが宿った。


「貴女こそ理解できてない!」


反撃の狼煙として美咲の肘が沙也加のこめかみを狙う。咄嗟に仰け反った沙也加だが完全には避けきれず、床に後頭部を強打した。


「ハッ……効いた?」

挑発的な笑みを浮かべる美咲。しかし沙也加はその隙を見逃さなかった。

「調子に乗らないでよ!」

沙也加の両足が蛇のように美咲の胴体に絡みつく。そのまま全体重をかけて床へ叩きつけた。

「キャッ!」


悲鳴を上げる美咲の上に沙也加が馬乗りになる。勝負ありと思われたその刹那—

「まだよ……!」

美咲が両腕を上方へ振り上げ、沙也加の胸元を強打した。

「ぐぇっ!」


一瞬の怯みをついて美咲が体位を入れ替える。逆に沙也加を組み伏せる形となった彼女の目には涙が光っていた。

「私の方が……ずっと前から好きだったのに……」


嗚咽混じりの告白と共に美咲の拳が沙也加の腹部へめり込んだ。

「うっ……!」

悶絶する沙也加。しかし彼女は涙を拭うことなく叫び返した。

「それでも今は私が選ばれてるの!」


言い終わるなり沙也加の膝が美咲の脇腹を捉える。再び二人の体が激しく絡み合いながら地面を転がり始める。

# 嫉妬という名の刃

「選ばれてるかどうかなんて関係ないわよ!!」


美咲の怒声と共に彼女の膝が沙也加の腹部へ深々と突き刺さる。

「うぐっ!」

咳き込む沙也加の体を容赦なくひっくり返し、今度は美咲が上から押さえつける番だった。


「ずっと見てきたのは私なんだから……!」


涙を流しながらも美咲の拳が振り下ろされる。しかし沙也加も黙ってはいない。

「過去なんて意味ない!今の気持ちだけが大事でしょ!」


言い返すと同時に両足を跳ね上げ、美咲の顔面を直撃させた。

「あうっ!」


一瞬よろけた美咲の隙を突いて沙也加が脱出を試みる。しかしすぐに美咲が髪を掴んで引き戻した。

「どこ行くのよ!」


二人の体が激しくもつれ合いながら再度床を転がる。何度も上下が入れ替わり、それぞれの攻撃が互いの急所を捉えていく。

「先輩には……私のことだけ見てほしいのに……!」

「それはこっちのセリフよ……!」


涙と汗と血でぐちゃぐちゃになった二人の顔には、もはや優劣を付ける余裕など存在しなかった。

# 消えない炎

「そんなこと言って……本当は怖いんじゃないの?」

沙也加の冷たい声が美咲の耳朶を叩く。その瞬間、彼女の拳が沙也加の頬を捉えた。

「黙れ……!」


バランスを崩した沙也加が床へ倒れ込む。そこに美咲が飛びかかり馬乗りになると、一方的な暴力が始まった。

「私がどれだけ悩んできたと思ってるの!?」

連続パンチを浴びせる美咲の目からは大粒の涙が零れ落ちる。

「やめて……お願い……」


弱々しく懇願する沙也加だったが、美咲の攻撃は止まない。彼女の感情の洪水を表すように拳が次々と沙也加の身体を打ち据える。

「先輩のこと……誰にも渡したくなかったのに……!」


怒りと悲しみがない交ぜになった叫びが体育館内に木霊する。その時―

「そこまでだ!」

低く響く男性の声。振り向けばそこには監督である吉川の姿があった。

「二人とも何をしているんだ!」


怒気を含んだ言葉に美咲はピタリと動きを止める。しかし沙也加は力尽きたようにその場に横たわったままだった。


動画はこちらhttps://x.com/nabuhero

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