第31話 美咲vs和香 爆ぜる夜の火花 浴衣キャットファイト
## 爆ぜる夜の火花
和香の長い黒髪が乱れ、汗で肌に貼りついていた。彼女の瞳には、美咲への憎悪が燃えている。花火の光に照らされる二人の浴衣は既に原型を留めておらず、袖や襟元が引き裂かれていた。
「離しなさいよ!この泥棒猫!」
和香の爪が美咲の頬を掻き、赤い筋を残した。美咲は一瞬怯んだものの、すぐに和香の首に腕を回し、体を反転させて地面に押し倒した。
「うるさいわね……あんたこそ人のものを奪うだけじゃない!」
「違う!彼は最初から私のものよ!」
美咲の拳が和香の腹部を打った瞬間、ドーンと大きな花火が夜空を彩り、その音に混じって和香の悲鳴が消えた。地面に倒れた和香はすぐさま美咲の足を掴み、もう一方の手で浴衣の裾を力任せに引き裂いた。
「キャアッ!」
美咲の悲鳴と共に白い太ももがあらわになった。周囲の観客は遠巻きに見ているだけで、誰も止めに入る者はいない。皆花火よりこの痴話喧嘩の方が興味深いようだ。
美咲は屈辱に顔を歪めながらも立ち上がり、和香の髪を掴んで引き寄せた。
「よくも……恥をかかせて!」
激しく頭を揺さぶると、和香の簪が飛んで髪が解けた。二人は今度は互いの唇に噛みつき合い、唾液と血の混じった糸を引きながら罵り合う。
「私の人生狂わせた責任取りなさい!」
「あんたのせいで婚約まで解消されたのに?笑っちゃうわね」
美咲の膝蹴りが和香の脇腹に入り、和香は呻きながらも美咲の胸ぐらを掴んで引き寄せ、今度はその唇に思い切り歯を立てた。
「痛っ……!何すんのよ!」
「あんたみたいなのを殺してやる!」
和香は美咲の首に両手をかけたが、美咲は即座に和香の手首を掴み返し、そのまま捻り上げて地面に叩きつけた。
「簡単に殺せると思うな……」
美咲は和香に馬乗りになると、彼女の額に自分の額を叩きつけた。ゴツンという鈍い音と共に二人とも一瞬目眩を起こしたが、どちらも譲らない。
「私こそ彼の運命の人なのに……!」
「嘘つき!浮気者!」
「そっちこそ二股かけてたくせに!」
「彼はそんな人じゃない!」
「騙されてるだけよ!」
二人は浴衣が泥にまみれるのも構わず、髪を掴み合って地面を転がり続けた。美咲の帯が完全に解け、浴衣の前がはだけて片方の肩が出ている。和香もまた襟が大きく開き、鎖骨が露わになっていた。しかし二人とも羞恥心などとうに捨て去っている。
「死ね!」
美咲が和香の顔面に何度も拳を振り下ろす。和香は鼻血を垂らしながらも美咲の耳たぶに噛みついた。
「ひぎゃっ!」
美咲の悲鳴とともに、和香は勝利の笑みを浮かべたが、すぐに美咲の肘打ちが和香のこめかみを直撃する。
「許さない……絶対に許さないから……」
「それは私のセリフよ……」
二人は再び起き上がり、今度は浴衣の袖同士を絡ませて強く引っぱり合った。布地が悲鳴を上げる。
「離せ!このくそ女!」
「あんたこそ離しなさいよ!」
最後の一発、和香の頭突きが美咲の額に命中し、二人は同時に後ろによろけた。しかしすぐにお互いの浴衣の襟を掴み直し、また睨み合う。
花火大会が終わっても、二人の戦いは続いた。遠くで終了のアナウンスが流れても、彼女たちの間に和解の兆しはない。むしろ月明かりの下で始まった新たなラウンドでは、浴衣の残骸が風に舞い散る中で、さらに執拗に相手を傷つけ合うのだった。
「いつか絶対……地獄を見せてやるわ……」
「先に地獄に行くのはあなたよ……」
吐息がかかるほど近くで毒づき合いながらも、互いの指は決して相手の皮膚から離れなかった。
## 遊園地の暗闘
三ヶ月後──遊園地の観覧車の下で。
美咲はコーヒーカップから降りた瞬間、見覚えのある影に気づいた。そこには和香が立っていた。春の遊園地は家族連れで賑わっていたが、二人の周りだけ時間が止まったように静かになる。
「……やっぱりここにも来たのね」
和香の声は低く冷たい。今日も彼女は華やかな桜色の着物を身につけていたが、その目つきは前回よりも危険な光を宿していた。
「あなたこそ……待ち伏せ?」
美咲は緋色の振袖の袖を整えると、周囲を素早く確認した。子供たちが風船を配る姿が見える。平和な景色の中での不穏な対峙。
「まさか。偶然よ」
和香は微笑んだが、その笑みには毒があった。「でも……この機会を逃すつもりもないわ」
言葉が終わる前に和香は動いた。驚くべきことに彼女は髪飾りを外すと同時にそれを美咲の顔へ投げつけた。ガラス製の細工が当たりそうになり、美咲は咄嗟に腕で防ぐ。
「卑怯ね!」
美咲の反撃は早かった。着物の内側から小さな鋏を取り出し、和香の着物の裾を思いっきり切り裂いた。
「ギャッ!」
和香の悲鳴と共に着物の下半分が地面に落ちた。純白の襦袢と紺の袴下が露わになり、周囲の視線が集中する。
「見せ物じゃないわ!」
美咲は鋏を逆手に持ち替えて威嚇したが、すぐに和香が彼女の首に腕を回してきた。前回とは違い今日は動きが早い。
「こんなもの持ってたなんて……」
和香の囁きとともに彼女の簪が美咲の肩に食い込む。簪の先端が尖っていることを美咲は悟り、即座に和香の腕を掴んで振り払った。
「お互い様よ!」
## 終末の遊園地
観覧車から降りた二人の間には見えない火花が散っていた。和香の着物裾は切り裂かれ、美咲の振袖には簪の傷跡が残る。閉園アナウンスが流れる中、管理者たちが退去するのを待っていたかのように二人は動き始めた。
「次はどこがいい?」和香の唇が吊り上がる。着物の裂け目から太腿が覗いているが気にする様子はない。
「どこでも。あなたの墓場にしてあげるわ」
遊園地の灯りが一つずつ消えていく中で二人の足音だけが響く。ジェットコースターの下を通り抜ける時、突然和香が美咲の帯を掴んだ。
「!」
美咲はバランスを崩し、地面に膝をつく。和香は勝ち誇ったように帯を引き寄せたが、美咲はすぐに帯の結び目を解いて逆に和香の手首を巻きつけた。
「甘いわね」
帯が手首に食い込む痛みに顔をしかめる和香。美咲は容赦なく帯を締め上げながら彼女の頬を叩いた。
「この程度?」
和香の嘲笑とともに彼女の膝が美咲の脇腹を蹴り上げる。美咲は咳き込みながらも帯を引き、和香を地面に引きずり倒した。二人は絡み合ったまま芝生を転がり、途中で和香の髪飾りが跳ね飛ぶ。
「髪を切れたらいいのに」
美咲が和香の髪を掴み上げると、和香は即座に美咲の鎖骨に噛みついた。
「イタッ!」
血の味が広がるのを感じながらも美咲は和香の顎を叩き上げた。
二人は立ち上がろうとするが互いの帯が絡まり自由に動けない。苛立ちが頂点に達した和香が美咲の耳たぶに歯を立てた瞬間――
「やめなさい!」
突然現れた警備員の怒号に二人は凍りついた。ライトを向けられ浴衣の残骸をまとった二人の姿は異様だった。
「早く出ていけ!通報するぞ!」
警備員の恫喝に和香がまず帯をほどき始めた。美咲も渋々従いながらも隙を見て和香の首筋に爪を立てる。
「次はどこで」
遊園地の正門を抜けながら和香が呟いた。
「次は最後にするわ」
美咲の声には確信があった。二人の間に交わされた暗黙の了解――これはまだ始まりにすぎないと。
閉店したレストランの窓に映る二人の姿は戦士のようであり娼婦のようでもあった。帯が緩み肌が露出した状態で街灯の下を歩く二人の間には言葉以上の何かが漂っていた。
「明日午後3時」
「駅前の古書店裏の路地」
短い言葉のやり取りだけで十分だった。
## 路地裏の決戦
午後2時55分。予定より5分早く現れた和香は路地の入口で煙草に火をつけた。白いブラウスに細身のジーンズという普段着だが、袖口が少し擦れている。美咲も似たようなラフな格好だったが、パンプスのヒールは新品同様に磨かれていた。
「遅刻したらどうしようかと思ったわ」
和香の紫煙が風に乗って美咲の方へ流れる。
「待たせてよかったのに」
美咲の唇が薄く開いた瞬間、和香のハイヒールが美咲の脛を蹴り上げた。
「っ!」
悲鳴を飲み込んだ美咲が反射的に和香の首に腕を巻きつける。二人は狭い路地で揉み合いながら奥へと進んでいった。途中のゴミ箱が倒れ、空き缶が転がる音が響く。
「こういうところでヤったら警察呼ぶわよ」
和香の嘲りに美咲は答えず、壁に押さえつけた和香の腕を背中に回して締め上げた。
「痛い……!離せ!」
抵抗する和香の爪が美咲の顔を引っ掻く。頬に赤い筋が走ったが美咲は力を緩めない。
突然和香が足をバタつかせ始め、靴底が美咲の脇腹を直撃した。拘束が解けた途端に和香は美咲の髪を掴み引きずるように路面へ引き倒す。
「このブス!」
唾を吐きかけようとした瞬間、美咲の膝が和香の股間を狙う。咄嗟に横に避けた和香だったが、バランスを崩して電柱に背中を強打した。
「汚い手使うわね……」
美咲の冷笑に和香の表情が変わる。
「教科書通りの喧嘩じゃ面白くないでしょ?」
言いながら和香は美咲の足首を掴み、力任せに捻った。
「ぐっ……!」
足を取られた美咲が地面に転がる。和香は躊躇なく上に跨り、馬乗りになって美咲の顔面に拳を振り下ろした。
「私を馬鹿にしたこと忘れないわよ!」
繰り返される殴打に美咲の鼻から血が滴る。しかし突然美咲の脚が和香の脇腹を突き上げ、二人はまたも地面を転がることになった。
起き上がろうとした美咲の髪が和香の左手に捕まる。ぐいっと引き上げられた拍子に美咲の上半身が伸びきったところへ和香の右拳が喉仏を直撃した。
「かはっ……!」
呼吸困難に喘ぐ美咲を今度は美咲自身の手が助けた。自由な右手で和香の耳たぶを思い切り捻り上げる。
「ひぃ……っ!」
耳を庇うために髪を離した隙に美咲は後転で脱出し、逆に和香の首を掴んで壁に押しつけた。
「……これでおあいこね」
美咲の冷たい声に和香の顔が歪む。
「まだ序の口よ……!」
和香の歯が美咲の親指に深々と食い込んだ。
「この……!」
激痛に耐えきれず美咲が手を離すと同時に和香の膝が美咲の鳩尾に入った。
「ごほっ……!」
前かがみになった美咲の背中を和香が思い切り踏みつける。靴底が背骨に当たる鈍い音。
「弱い……弱すぎる」
嘲笑う和香の声に美咲は反撃する体力も尽きてきたように見えた。しかし突然彼女の足が跳ね上がり和香の太腿を直撃。よろめいた和香の髪を再び美咲が掴む。
「離せっ……!」
必死にもがく和香の顔面に今度は美咲の頭突きが炸裂した。
「あうっ!」
鼻血を噴き出した和香の口角が上がり始める。
「やればできるじゃない」
血まみれの顔で挑発する和香に美咲が襲いかかる。二人の爪が互いの肌を削り合い、路地裏の闇に鮮血の模様が増えていく。
## 血染めの路地
和香の爪が美咲の頬に食い込んだ。皮膚が裂け、血が滴る感触に和香は快感すら覚えていた。美咲は痛みに耐えながらも和香の髪を掴み返す。
「やっと本気出した?」美咲の嘲笑に和香の眉が吊り上がった。
和香の爪が美咲の頬を裂く。鮮血が飛び散るのも構わず美咲は和香の髪を鷲掴みにし地面へ叩きつけた。衝撃で路面の砂利が舞い上がる。
「っく!」
仰向けになった和香の顔面に美咲の蹴りが入った。鼻血が白いブラウスを染める。
「まだよ!」
和香は美咲の足首を掴み引っ張り倒す。絡み合う二人の間に挟まれた小石が肌を削る。
「この……!」
美咲の肘打ちが和香の鳩尾に入る。息を詰まらせた和香の首を絞め上げようとした美咲だが、突如和香の歯が美咲の鎖骨を捉えた。
「ぎゃあっ!」
痛みに手を離した隙に和香は起き上がり美咲の脇腹を膝で突く。肋骨に響く衝撃に美咲は背を丸めた。
「終わり? 弱いわね!」
嘲笑う和香の顎を狙った美咲の頭突きが命中。鼻梁に当たった骨の音が響く。
「……うるさい!」
互いに血まみれの顔で睨み合う。次の瞬間、二人同時に相手の衣服を掴んだ。ボタンが弾け飛ぶ音と共に布地が裂ける。
「離せ!」
美咲が和香の腕を捻り上げると同時に和香の爪が美咲の瞼を引っ掻く。視界が霞む中でも美咲は和香の頭を壁に叩きつけた。
「くそっ……!」
意識が遠のきかけた和香だが即座に足を払い美咲を転倒させる。仰向けに倒れた美咲の胸を踏みつけようと体重をかけた。
「重っ!」
美咲は足首を掴み反転させると和香をうつ伏せに押さえ込んだ。
「終わりよ……」
腕を背中に回して締め上げる美咲の腕に和香が噛みつく。
「いっ……!」
力が緩んだ瞬間に和香が抜け出す。今度は美咲の髪を掴み引きずりながらゴミ箱に叩きつけた。
「ゴミと一緒に燃えちゃえば?」
嘲笑と共に顔面を殴りつけるが、美咲の膝が和香の股間に直撃する。
「あぐぅっ!」
悶絶した和香の背中を美咲が馬乗りになり殴打を加える。
「あんたの……勝ちかもね」
唇を血で濡らした和香が自嘲気味に呟いた瞬間―美咲の拳が停止した。警戒心から距離を取った二人の間には荒い呼吸だけが響く。
美咲は和香の耳元に顔を近づけると囁いた。
「次は何時?」
和香が微かに首を横に振る。二人は血と埃にまみれたまま路地の隅に寄り添っていた。周囲には荒い息遣いと遠くから聞こえる救急車のサイレンだけが響いている。
「……次は無いわ」
美咲の言葉に和香の顔が歪む。
「嘘つき」
和香の指が美咲の首筋を這う。その動作に含まれるのは明らかな挑発と憎悪だ。
「じゃあ最後に一つだけ教えてよ」
美咲がゆっくり立ち上がりながら尋ねる。
「本当に彼のこと……好きだった?」
一瞬の沈黙の後、和香の唇が引きつった笑みを形作った。
「今さらそんなこと聞いてどうするの?」
彼女の声には嘲弄と諦観が混ざっている。
「知りたいだけよ」
美咲はポケットからハンカチを取り出して頬の血を拭う。白い布が瞬く間に赤く染まっていくのを和香はじっと見つめていた。
「愛してたわよ」
唐突な告白に美咲の動きが止まった。
## 傷痕
路地裏の暗がりで二人は血まみれの顔を見合わせていた。和香の爪が美咲の乳房を掴む。指が柔肉に食い込み、美咲が苦悶の叫びを漏らす。
「こんな……胸で誘惑したのね」
嫉妬に狂った和香の目に涙が滲んだ。
「あんただって……」
美咲は痛みに耐えながら和香の胸を強く掴み返した。裂けたブラウスから露わになった膨らみが二人の掌の下で歪む。
「いつも……あの人に見せつけてたでしょう?」
互いに相手の胸を握り締め合う膠着状態。爪が肌を破り血が滲む中、突如美咲が和香を地面へ押し倒した。そして股間に膝蹴りを入れる。
「ぐっ……!」
和香が悲鳴を堪えながらも反撃に出る。
動画はこちらhttps://x.com/nabuhero
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