風鈴の音色
東井タカヒロ
夏の風鈴
僕の家には風鈴がない。
夏になると、風鈴の音色がなり始める。
どこを探しても風鈴は無いのに。
いつから起きたかは分からないけど、物心付く頃には既にあったのを覚えている。
特に害もなく、風鈴の音がなるだけだったし、気にしてなかった。
だけど、最近は少し違う。
今までは部屋の中にいた時だけに聞こえたのに、今では部屋の外でも聞こえる。
風鈴の音が耳からずっと離れない。
「……またか」
しかも、風鈴の音はいつ鳴るか分からない。
そして、いつ鳴り止むか分からない。
それが実に不愉快で、僕は何とか解決しようと考えた。
ネットで調べた近くの神社に向かい、このことを相談してみた。
「それは、夏風の風鈴ですね」
「夏風の風鈴?」
「えぇ、たまにいるんですよ」
「払ってくれますか?」
「うーむ……出来るには出来ますが」
?何かあるのだろうか。
「その風鈴がなる時は何かを告げる時なんだよ。心当たりとかありますか?」
「……あっ」
「何か心当たりが?」
「まだ、お盆で実家に帰ってなくて。毎年この時期は帰っているから」
「では、一度実家に帰られるとよい。きっと、風鈴も止まりますよ」
僕は車を走らせ、山奥にある自分の実家に帰ってきた。
ここに来る道中も時々風鈴が鳴っていた。
家の前についた今は――
もっと風鈴が鳴り響いて、鳴り止む気配が一切ない。
その音が、周囲の音をかき消すほどに……。
風鈴の音色 東井タカヒロ @touitakahiro
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