最終話 花火が上がる前に恋が弾ける


 花火が上がる前に、金城は何か話したそうな顔をしていた。


「なんだよ、話したいことって」


 そう聞き返すと、金城はまた夜空の方へ視線を戻す。


「……今日さ、正直に言うとちょっと緊張してたっつうか」

「緊張? まさかそれって……俺と居るから?」

「は、はあ⁉︎ ちげーし! 自惚れんな!」


 ちょっと冗談で言ってみたのだが、金城から本気で怒られてしまう。

 そりゃ、そうだよな。俺と居て緊張してたらたこ焼きだの焼きそばだの食えるわけないか。


「ったく。わたしが緊張してたっていうのは、ここに来る前の話。もしも姫奈と花火とか夜店を回るってなった時、わたしが飽きることで迷惑かけないかなって」

「飽きて、迷惑……?」

「そそ。わたしって飽きると露骨に顔と声に出るからさ、せっかくのお祭りなのに、一緒にいる姫奈に変な気を遣わせたくないっていうか。花火大会なのに花火に飽きる可能性もあったし」


 花火大会なのに花火に飽きて見なくなるなんてあるのか?

 ……と思ったが、ぶっちゃけ花火大会にいるカップルはほぼ花火なんかより隣にいる恋人のこと考えてるし、なんなら花火の後でするエロいことの方を考えてそうだから、強ち間違っていないかもしれないな(究極な偏見)。


「でもさ……今日は色々あったとはいえ、姫奈じゃなくて西山が来てくれたから、正直嬉しかったっつうか」

「だろうな。俺の前なら遠慮なく飽きれるからな」

「別にそういうことじゃないし。前にも言ったけど、一生残る思い出って、誰かの作った物語だけじゃないと思うし、自分で作るものだと思うからさ」


 自分で作る……思い出、か。


「だからこうやって西山と一緒に花火が見れることは、一生忘れられない思い出になると思う」


 金城は柔らかい笑みでそう呟くと、そっと俺の方へ近づいてくる。


「ちょ、金城、ちかっ」

「近づいてんの。いいじゃん。思い出作りのためなんだし」

「でも!」

「そんな拒否るなら飽きて帰っちゃおっかなぁ」

「わ、分かったよ……」


 その思い出作りとやらは、この距離感で花火を見る必要があるのだろうか。

 彼女の自慢のサラサラした金髪が、俺の右肩に当たり、そのデカい胸も、浴衣越しにその横乳が少しだけ俺の右腕に触れている。


 これは……童貞の俺としては良い思い出になるかもしれないな……。


「ふっ。これでまた、思い出増えたっしょ?」

「……っっっ! な、なんだよ!」


 少しだけ頭の中を読まれた気がした。


「でもさー西山。ぶっちゃけわたし、あんたと友達って関係には、もう飽きたんだよねー?」

「えっ」


 それって……つまり、俺のことが飽きたってことか?

 そんな、急すぎるだろ。花火もまだ上がってないのに!


 俺としては……まだ……金城と。


「金城、あのさ! 俺はまだ金城と!」


「わたしは西山と友達でいるの飽きた。だからこれからはさ——」


 金城は真横から俺の頬に向かって顔を近づけると、その柔らかい唇で……えっ。


「っ……なってよ。わたしのカレシ」


 頬から唇が離れるのと同時に、耳元囁かれた一言。


「……え? か、かか、かれ⁉︎ カラシの間違いか⁉︎」

「いやカラシじゃねえし。わたしのカレシになってって言ってんの! 雰囲気台無しだから!」


 か、かかかか、彼氏、だと⁉︎

 俺なんかが、金城の……彼氏に⁉︎


「え、えとえと、なんていうか、その! 本気か!」

「ぷっ、あははっ! 本気に決まってんじゃんったく。ほんと、西山は飽きないわぁ」

「お、俺、なんかでいいのか?」

「だからさ、わたしは西山がいいの。その代わり一生、わたしのことを飽きさせないこと? いい?」


 俺は特別なにかしているわけではないが……でも。


「わ、分かった! 約束する! 絶対、金城のこと、飽きさせないから、だから一生俺と付き合ってください!!!」

「いやお願いしてんのこっちなんだけど……ま、そういうとこが西山らしいかもね」


 金城はそっと俺の手とギュッと恋人握りをすると、俺の右肩に頭を傾けてくる。


「そんじゃさ、この後花火見たら、一緒に西山の家帰って……ちょっとえっちいこと、する?」

「ダメだ。一生付き合う以上、未成年のうちは健全なお付き合いをしていく必要があると思う。未成年のうちにあまりどエロいことをしたら、それこそ将来的に俺に飽きる可能性が」

「うわ真面目か! あんた、おぱ吸いとか読んでるくせに本当に吸える時は吸わないとか。マジのヘタレじゃん」

「なっ! お、おっぱい吸うのは、もう少し大人になってからなんだよ!」

「大声ウケる。周りの人ドン引くから」

「あ、す、すみません」


 俺は周囲に謝りながら夜でもわかるくらい真っ赤に


「そんじゃ。付き合うことになった以上、遠慮する必要もなくなったわけだし、とりあえず今夜は泊まるから。ナニするかは置いておいて」

「……俺の部屋で、な、なに、するんだよ」

「え? RPGの続きに決まってるし。逆に薙斗くんはなんだと思ったのかなー?」

「ドスケベえっちするのかと」

「急に正直⁉︎ え、人格変わった? ドスケベな方に変わった?」


 ドスケベをするのかしないのか、どっちなんだよ、ほんと。


「まあわたしも精一杯、西山に飽きられないように頑張るからさ、西山もわたしのこと飽きさせないこと。分かった? ?」

「ああ……もちろんだ。飽き性の愛希」


 こうして、俺と金城は付き合うことになった。


 お互いにお互いを飽きない日々が永遠に続くことを、まだこの時点で俺たちは知らない。


 〜完〜


『あとがきという名の雑談』


ご無沙汰してます。星野星野ホシノセイヤです。

最初、この作品はこえけんのドラマ部門にまた応募して読者賞が欲しいなぁと思って書いてましたが、毎日書いているうちにこの作品を書くことが楽しくなってしまい、応募要件の1万字以内どころかいつの間にか3万字を超えてしまいました(笑)

削りたくないので応募しません。

ちゃんと完結まで導けたので一安心……というか、素直に楽しかったです。


そして最新作ラブコメとして

『1年間部屋に引きこもってたら、知らない間に親の再婚で超絶美少女の義妹たちと同居していた件。』

https://kakuyomu.jp/works/16818792439529445160/episodes/16818792439529503746


昨日から連載スタートしましたので、良かったらこちらの応援もよろしくお願いします。

いつも読んでくださる読者様たちには感謝しかありません。

いつもありがとうございます。

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超絶美少女なのに飽き性のギャルが、ぼっちの俺にだけ飽きてくれない理由。 星野星野@5作品書籍化商業化 @seiyahoshino

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