1年間部屋に引きこもってたら、知らない間に親の再婚で超絶美少女の義妹たちが同居していた件。

星野星野@5作品書籍化商業化

第1話 人生終わったと思ったら美少女の義妹がやってきた


 人生で初めてふるいにかけられる瞬間イベントといえば、おそらくそれは"高校受験"だろう。


 義務教育が終わり、それぞれの実力に見合った進路に分かれる瞬間……それこそが高校受験だ。


 俺、喜多島青斗きたじまあおともまた、その初めてふるいにかけられる高校受験の瞬間を、幼馴染と一緒に見に来ていた。


「ねえ青斗。そろそろ合格者の受験番号が張り出されるね? 二人とも合格だといいなぁ」

「あ、ああ」


 一緒に合格者の発表を見に来たのは、俺と同じ高校を受験した幼馴染の水瀬春香みなせはるか

 春香は幼少期から中学3年になるまでずっと俺の隣にいてくれた、そんな唯一無二の存在。

 家が近所ということで幼少期から遊ぶことが多かった春香は、毎年バレンタインにはチョコをくれて、同じスイミングスクールに通い、塾も英会話教室もずっと同じ。


 しかも中学に上がってからは、俺が父子家庭であることからか、わざわざ気を遣って晩御飯まで作りに来てくれたほどだ。


 そんな大切な幼馴染である春香の背中を追いかける中で、必然的に俺も勉強の成績が良くなったし、この難関県立高校に受験できたのも全て春香のおかげだ。

 だから春香には感謝しかない。


 そんな春香に……俺は伝えたい気持ちがある。

 ずっと照れ臭くて秘めていた、そんな想いが。


(春香と同じ高校に合格して、しっかりこの気持ちを伝えて、このままずっと春香と——!)


「あっ、合格者の番号が張り出されたよ」

「……っ!」


 合格者の受験番号が張り出されたその刹那……俺は人生における最大の挫折を味わった。


「あった! 私の番号あったよ! 青……斗?」

「……」


 嘘、だろ。

 嘘、だ……嘘だ嘘だ嘘だ!!!


 俺の受験番号! ねぇぇぇえええんだが!!!


「青斗、もしかして……?」

「ごめん。俺の番号はない、みたいだ」

「え、えっと。その……」


 春香は何も言えずに申し訳なさそうに俯く。


 なんで……俺が……こんな。


 これ、どう考えても合格する流れだったろ! 

 このまま幼馴染と一生ハッピーエンドの流れだったろ!

 不合格になるのが、こんなにも、こんなにも、悔しいだなんて。


 それと同時に、心の中では何もかもどうでも良くなっていた。

 春香と一緒の道を進む手段を失って、絶望してしまったのだ。


「ごめん春香。俺、もう帰るわ」

「あ、青斗……」


 俺は一人寂しく、家に帰る。


 俺の人生……終わった……。


 ——そんな悲劇から1年後。


「よし……これで最難関クエスト攻略完了。武器のレベルもカンストしたから次も楽勝だな」


 1年前までは最難関の県立高校を目指していた俺だったが、いつしかゲームのに挑むになっていた。


 ☆☆


 人間のメンタルはプレッツェル菓子くらい簡単にポキッと折れるものだ。


 1年前、俺のメンタルも不合格通知によって、幼馴染との関係と一緒にボロボロに粉砕された。


 あれから春香と話すことはなくなったし、受験に落ちて何もかも嫌になった俺は、現実逃避で部屋に引きこもってオンラインゲームに熱中するようになった。


 そう……典型的なドロップアウトである。


 俺がそんな状態になっていても唯一の家族である父親は、昔から仕事一筋で寡黙な人間だからか、俺を叱ることは一度もなかった。

 さらに父は長期の出張が増えたらしく、俺が引きこもるようになってからは家政婦の三田山さん(58歳)に、この家のことを任せっきりにしている。


 そういや、三田山さんと言えば、もう夕方だしそろそろだな……。


「青斗さん。こちらに晩御飯を置いておきます」


 部屋の外から三田山さんの声がして、俺の部屋の前でコトンと、晩御飯のトレーを置いた音がした。

 俺はその声を聞いて、座っていたゲーミングチェアから立ち上がる。


「青斗さん……これがわたくしの作る最後の晩御飯です。今までありがとうございました」


 ドアの向こうで三田山さんの寂しそうな声がした。

 これが最後? どういうことだ?


「それと……。これを機に青斗さんのお気持ちに変化があることを、この三田山も願っております。それでは」


 三田山さんはそう言い残し、階段を降りていく。

 俺はそれを確認してからドアを開けると、三田山さんが置いてくれた晩御飯のトレーを部屋の中へと持ち込んだ。


「三田山さんの言ってた『最後』ってどういうことだ?」


 契約が切れてやめるのだろうか?

 そんな感じもするけど、親父からは何も言われてないし……というかあの親父は何も言わないよな。


 三田山さんが言ったことを疑問に思いながらも、俺はこれからもいつも通りの日々を過ごす……はずだった。


 ☆☆


 その夜のことだ。

 引きこもりゲーマーとはいえ風呂にはしっかり入りたい主義の俺は、夜遅くまで一頻りゲームをやった後、深夜2時くらいに1階の風呂場へと向かう。


「さっさと風呂入って寝よ……って、ん?」


 風呂場へ向かう途中、リビングのソファに見慣れない"モノ"がいくつか置かれていることに気がつく。

 女性向けファッション誌にまつ毛ローラーと、何やらリップのようなもの。


(なんだこれ。いかにも女性の私物、みたいだよな?)


 三田山さんがまだいるのか?

 でも三田山さんはいつも21時くらいには帰っちゃうし、年齢的にも三田山さんがこんな若そうな女性のグッズを持ち込んだとは思えない。


「まあ……いいや。また明日、三田山さんが片付けてくれるだろうし」


 三田山さんも意外と若い人向けのグッズに憧れがあるんだろうな。

 俺はそれをスルーして風呂場へ直行し、風呂場の前で着ていた服を脱ぐ。


 そしていつも洗い物を入れる脱衣籠へ服を入れようとした……がその瞬間、俺はまたしても、変なモノを見つけてしまう。


「なっ……! な、なんだこの、下着っっ」


 脱衣籠の中には、やけに可愛らしい女性モノ下着が3着、上下で揃っており、ピッタリ3色団子みたいなカラーリングで入っていた。


「このパンツとブラ? どう見ても女性用の下着、だよな?」


 三田山さん、の下着……なのか?


「でもこのブラ、やけにでっかいな……」


 三田山さんはそんなデカいイメージはなかったんだが……。

 でもこんないかにも若い子向けみたいな下着を58の三田山さんが着てたら、逆に変な性癖になりそうなんだが。


「マジで何が起こってるんだ……今、この家には俺以外住んでいないはずだぞ」


 しかもやけにこの風呂場、湿気が……。

 換気扇を忘れたのか、風呂場ではまだ湯気があった。


 三田山さんが何日か風呂に入って、下着をそのまま洗わず置いておいた……? のか?


「そんなわけ……ないよな」


 よく分からないけどなんか怖いし、やっぱ今日は風呂入るのやめてもう寝よう。

 俺はさっきまでの服を着直して、部屋に戻ることを決めた。


 何が起きているのかは分からないが、明日また三田山さんに訊ねれば済む話だ。


 俺は部屋に戻るとベッドに飛び込んで眠りについた。


 ☆☆


 朝、目が覚めてすぐに俺は、さっそくまた新たな違和感に気がつく。


 そもそも俺はいつも9時くらいに目覚めるのが日課なのだが……今日は7時に起きてしまった。


 その1番の理由が……下の階からずっと聞き覚えのない声が聞こえて来るのだ。


「やっぱ昨日のは夢じゃない……誰かがこの家に、"いる"」


 そう確信した俺は、恐る恐る下の階へと降りていく……。


 すると、そこには。


「……え?」


 当たり前のようにリビングの食卓に広げられた朝食。

 そして4つある椅子の3つを埋める3人の女子がいて、3人ともどことなく顔が似ている。


 金髪ショートボブにイヤリングとネイルをした"いかにも"な見た目のギャル。

 茶髪ロングのおっとりとした目つきで、見るからに優しそうな女子。

 そして、一人だけやけに背が低い割にやけに目立つピンク髪の童顔で可愛いらしい女子が座っている。


 全員に総じて言えることはやけに胸がデカいということ……だが、今はそうじゃない!


 なんだこの状況、俺、異世界転移でもしたのか。


「誰だろあの人……この家の使用人さん?」

「違うでしょ。私服だし」

「あらぁ。二人とも青斗くんだよ青斗くん。おじさんが一人息子がいるって言ってたじゃない?」

「「ああー」」

「今日からわたしたちもお世話になるんだから、挨拶しないとね」

「そだねー」


 なんか納得した雰囲気になってるけど……。


 そもそもお前らが誰なんだよ!!??


 4月初旬、波乱の幕開けである。

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