第24話 8年後の誕生日会

帝国との決戦から八年の歳月が流れた。

街はすっかり豊かになり、アルゴノーツは名実ともに強国のひとつとなった。

今日は俺、アルゴの十六歳の誕生日会。

大広間には多くの国からの使者が集い、華やかな宴が開かれていた。


王国からはセレネが来てくれている。

相変わらず気さくで、堂々とした振る舞いは以前のままだ。

彼女と俺は、今でも親友だ。

ゲームではヒロインだが、そのルートを俺は通らなかった。

だから、特別な関係にはまだなっていない。

それでも肩を並べて笑い合える、この距離感が今は心地よかった。


会場の片隅では、老師メラキが楽しげに笑っている。

驚いたことに、彼の隣にはあの老婆の師匠――ティアがいる。

そして賢者ディアが、その二人を見て頭を抱えていた。

「こんな未来は見たことがなかったな……。」

ぼやくディアに、俺は思わず吹き出した。

あの厳格だった師匠と、軽妙洒脱なメラキがこうして寄り添っているとは、確かに想像もつかない。


傭兵の師匠ギガースも駆けつけていた。

すっかり丸くなった顔で、俺たちを見て目を細めている。

彼には子どもが生まれ、よく弟子たちに俺とノーツの武勇伝を語っては「俺の弟子だ!」と自慢しているらしい。


そして両親――今でも王様と女王様を続けている二人は、俺たち兄弟を見て嬉しそうに頷いていた。

「やっとらしくなってきた」と国民たちが噂するのも頷ける、堂々たる貫禄があった。


兄は今、王子としての執務をこなす日々を送っている。

だが実は座学が苦手らしく、陰で頭を抱えている姿を何度か見た。

完璧だと思っていた兄の、唯一の弱点だ。


妖精たちも、今日のために大きなブーケを作ってくれた。

美しい布や花のアクセサリーを人々に贈り続け、街と他国の友好を深めてくれている。

その小さな翼が会場の灯りを受けて、きらきらと輝いていた。


テーブルには巨大なケーキが運ばれ、皆の笑顔が広がる。

切り分けられたケーキを二皿手に取ると、俺は人の波を抜けて執務室へ向かった。

そこには、机に向かって書類を睨む兄がいる。

「兄ちゃん、ケーキ持ってきた。」

兄は顔を上げ、少し疲れたように笑った。

「助かる。」

ケーキを手渡すと、俺は椅子を引いて隣に座る。

しばらく二人で甘いひとときを味わい、静かに時が過ぎた。


「俺、話したいことがあるんだ。」

「なんだ?」

「……もう一人の俺の物語。」

兄は驚いたように目を見開き、そしてゆっくりと頷いた。

窓の外では、夜空に花火が咲いている。

妖精たちの光と混じり合い、まるで物語の終章を祝うようだった。


こうして、アルゴと仲間たちの物語は幕を閉じた。

だが俺たちの日々はこれからも続く。

笑顔と希望に満ちた未来へ向かって。


めでたし、めでたし。

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ゲームオーバーのその先で @fuu349ari

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