黒猫はコスプレが嫌い
満月 花
第1話
どうか、わたしのペットが何を考えてるか教えてくれますように。
ふとそんな事を願った。
お気に入りの陽当たりの良い場所でクッションの上で丸まってスピスピ。
寝てる黒猫を撫でると小さく鳴きながら私を確認すると
またコテンと寝転び出した。
ねぇ、何か不満はない?
欲しいものはない?
ウチに来て幸せかな?
そんな事をいつも思う。
もしも、何か思いがあれば聞いてみたいな……。
ーーおい、起きろ
ポンポンと頭を叩かれる。
小さく柔らかな感触で
おい、起きろって!
お望み通り、教えてやるぞ!
ゆるく瞼を開けると
金色の猫目が覗き込んでいる。
いつものように頭を撫でると、またポコポコ頭を叩く。
お・き・ろ・今度は爪出すぞ!
え?声が聞こえる……なんで?
ガバッと起き上がると、慌てたように黒猫が避ける。
危なかった、いきなり動くな、びっくりするだろ。
……しゃべってる!ウチの黒猫が、いきなりしゃべり出した!
話したいって望んだんだろう?
実はな、猫は一生に一度だけ、人間の言葉を話す力がある。
だから、今日は特別に相手してやろうと思ったんだ。
なんかずいぶんと上から目線、ウチの黒猫。
そういえば4歳だ、人間でいえば30歳過ぎ
私より年上。
思わず正座してしまう。
あの何かご不満な事などは……。
黒猫の耳が横になる。
いっぱいあるぞ!
まず、
寝てる時に触るな、うっとうしい。
あの四角いもの近づけてくるな、キミ悪い。
変な飾りや服を着せてくるな。
耳が痛い
覚えがありすぎる。
ついつい構いたい。
スマホで動画撮りたい。
SNSでいいね欲しいがために
イベント毎にコスプレさせてた。
申し訳ありません。
項垂れたわたしだけど、2度としないとも言い切れない。
だって、可愛いんだもん!
……ほどほどにしてくれ。
嫌がったら諦めてくれ。
ウチのペットの方が大人だった。
でも、撫でられるのは嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
そしてたまに遊んで欲しい、少しの時間でいいから。
まったりとした時間を過ごしたい。
俺はお前の所に来て幸せだぞ。
大切にされて可愛がってくれてるの
わかってる。
具合が悪くなったら、すぐに気がついて懸命に看病してくれるのが
どんなに心強いか。
どんなに疲れても俺の世話は忘れない。
俺の毎日は整えられて快適だ。
だから、ちょっとぐらいのわがまま許してあげるけどな。
黒猫がスリスリと頭を寄せる。
俺の家族になってくれてありがとう。
俺の一番はお前だ。
お前だってそうだろ?
その言葉に涙が溢れる。
こちらこそありがとう
これからも、一緒に……。
目覚ましの音で飛び起きた。
夢?夢だったの?
……だよね、猫がしゃべるわけないし。
ずいぶんと都合のいい夢だったな。
黒猫がベッドに飛び乗ってきた。
おかしい夢を見たんだよ。
すごい文句言われたよ。
笑って、黒猫の頭を撫でる。
足元の感触に気づく。
今度使おうとしてたコスプレが何故かベッドの下に押し込まれている。
……まさかね。
黒猫は
耳とひげをピクピク動かしながら目を細めて、
ニャンと鳴いた。
黒猫はコスプレが嫌い 満月 花 @aoihanastory
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