過去に囚われた男が、異世界で命を斬る
- ★★★ Excellent!!!
東京の夏、十三回忌の墓前に立つ男・水口優人。
彼は過去を抱えたまま、もう動かない時間の中にいた。
しかし次に目覚めた場所は、見知らぬ異世界。
天上界――生と死の狭間にあるという不可思議な世界で、
彼は「神隠し」に巻き込まれた数人の男女と出会う。
帰還の手段は不明。
「女神」を名乗る少女の案内すら中途半端なまま、
彼らは見知らぬ森と村を目指して歩き出す。
居合術を学んだ男。
ラブレターを抱えていた少女。
腹を割れぬ他人たち。
そして――命を奪わなければ進めない現実。
生きるとは何か。
人を守るとはどういうことか。
死を乗り越えるとは、つまりどういう意味か。
かつて「死んだように生きていた」男は、
この異世界でようやく「命の重さ」に触れていく。