第一章(1~49話)読了時点でのレビューです。
舞台は、地上界(現代日本を含む世界)と、そこから「神隠し」で連れ去られた人々が流れ着く天上界。
ここはもともとひとつだった世界が大戦で引き裂かれ、生と死の間に生まれた“狭間”として描かれ、なるほどタイトルとはそういうことか、とまず納得感が来るのが素晴らしい。
読者と同じ目線を持つ地上出身者たちが、女神に説明されつつも、結局は「出るか出ないか」を自分で決めて一歩を踏み出していく序盤が、とても好きでした。
設定説明を会話劇とツッコミで見せてくるので、読み始めから重くなり過ぎず、すっと世界に入っていけます。
主人公は、多くの読者層に響くであろう「社会人視点」も持つ剣士の主人公。
地上で真面目に型稽古を積んできた居合いの技が、天上界では本当に「人を斬る力」になってしまう。
その瞬間に揺れる心情が丁寧で、1体目の狼、そして初めての人間の殺害シーンには、普通のなろう系より一歩踏み込んだ“重さ”がありました。
それでも彼は英雄ぶることも聖人ぶることもなく、「守りたいから戦うし、責任は自分で取る」というスタンスを崩さない。
元部下たちに対しても、甘やかすでも突き放すでもなく「選択だけは自分でしろ」と突きつける場面に、この作品全体のテーマが凝縮されているように感じます。
そんな主人公の隣にいるヒロインは、ただの“守られるヒロイン”で終わらないのが良いところ。
生きていく覚悟を決め、本を読みあさり、魔法の先生のもとで必死に学び、短期間で前線に立てる魔導師に育っていく過程がとても愛おしく頼もしいです。
ちょっと拗ねたり、同年代には年相応にデレたりと、思春期らしい揺れも描かれていて、幸せになってほしいという気持ちが自然と湧いてきます。
世界観・魔法体系も、かなり理解のし応えがあります・・・がっつり心を掴まれました。
魔力の器官、生の魔力を放つ元素魔法、それを媒介にして自然や古代語、神、召喚獣など外部の力を借りる各系統魔法――といった大枠が、作中の教本や授業として自然に解説されていきます。
特に風水魔法の「性格属性」という考え方は、文章表現での魔法での戦いに対して、良い感じに読者の頭の中に映像を作ってくれます。
現実の感覚に結びついていてイメージしやすく、「こう使うのか!」とワクワクしました。
暗黒魔法に手を伸ばすかどうか、という倫理的なラインも提示されていて、“便利な力”で終わらせず、かといって禁忌一辺倒としていないところが、さすがの一言です。
最後にまとめとして個人的な好みになってしまいますが、下記の内容が強く心に響きました。
・「ちゃんと大人が責任を取る」異世界モノとしての完成度。
・剣術や戦術描写のリアリティと、思想部分にまで踏み込んで体系立てられた魔法設定。
・明るい掛け合いの裏で、死や喪失、差別といった重いテーマにも踏み込む展開。
追記:
なぎゃなぎ先生には拙作も読んで頂いていることからわかって頂けると思いますが、個人的な好みのど真ん中でした!
まだ第一章までしか読み進むことが出来ていませんが、この先もじっくりと読ませてもらい、勉強させていただきます。
遙か昔に分かたれた、地上界と天上界。
現代の地上界に対して、中世ファンタジー風でどこもかしこも殺伐とした天上界。
地上界から行けるのは、神隠しか死後か、どちらにしてもごく少数らしい?
そんな世界で、神隠しに遭った男と、10年前に死んだ女が、再び巡り会い、そして……。
いきなり異界に放り出されて、そこからどうするのか? 何のために戦うのか? 何を選ぶのか?
生きる意味を問い続けるような物語。
それにしても……地上界からそれなりに人が行ってる筈なのに、近代的な変化すら見えない天上界ってどうなんだ?と思わなくもないですが……魔法があるにしても、もうちょっと……ねぇ?(苦笑)
そんな中でも、主人公達のみならず、懸命に生きる人達の姿に、引き込まれてしまいます。
何の間違いか、読み専なのに作家さんにフォローされてしまったので、作品を読まねば!と、読み始めたのですが(超不純)
すっかりハマり、更新を楽しみにしています。
異世界ファンタジーについて何も知らず、興味もなかった私でも非常に面白く感じられ、無我夢中で読み進めてしまいました。丁寧な人物描写、情景描写などが言葉で言い表せないほど素晴らしく、なぎゃなぎ先生の心が強くこもった作品だと思いました。
この作品には、時間を忘れてどんどん読み進めてしまう素晴らしさがあります。私が今まで読んできた小説の中でも屈指の神作です。小説を読むことの楽しさを私に思い出させてくれた一作でした。書籍化されたら真っ先に買いに行こうと思います。
異世界ファンタジーを読んだことがない皆さん、今からでも遅くありません。交界記を読みましょう。
なぎゃなぎ先生も忙しい毎日だとは思いますが、体調に気をつけて頑張ってください。
1話目から引き込まれました。まさか、純文学の切なさを味わうことになろうとは……
ライトすぎるノベルに胃もたれしている人におすすめ。程よくリアルで程よくファンタジー。物語のベクトルも示しつつ、ゆっくりと着実に歩んでいく様子がとっても心地よい。
異世界転移の特典など何もなく、ただただ自力で切り開いていく。主人公の地力が凄すぎるだけで普通に考えたら超ハードモード。それでも人は生きていく……って感じかな。
もっと評価されてしかるべき作品。WEB小説とは……ランキングって……書き手として、色々思うところもある今日この頃。もっと早く読んでおけばよかった。
まだ、序盤までしか読めていませんが、——ここで幕末!! こういうの好きです!
東京の夏、十三回忌の墓前に立つ男・水口優人。
彼は過去を抱えたまま、もう動かない時間の中にいた。
しかし次に目覚めた場所は、見知らぬ異世界。
天上界――生と死の狭間にあるという不可思議な世界で、
彼は「神隠し」に巻き込まれた数人の男女と出会う。
帰還の手段は不明。
「女神」を名乗る少女の案内すら中途半端なまま、
彼らは見知らぬ森と村を目指して歩き出す。
居合術を学んだ男。
ラブレターを抱えていた少女。
腹を割れぬ他人たち。
そして――命を奪わなければ進めない現実。
生きるとは何か。
人を守るとはどういうことか。
死を乗り越えるとは、つまりどういう意味か。
かつて「死んだように生きていた」男は、
この異世界でようやく「命の重さ」に触れていく。
ネタバレにならないように配慮して感想を述べたいと思います。
一話が読みごたえタップリの文字数で、一気読みはまず不可能です。これから読まれる方はじっくりとお時間のある時に読まれるのをお勧めいたします。
私の場合は仕事で数日あきますと話を再確認してから読むために、最初に戻って読むのですが、これがまた最初から読み直したことが結構ありました。濃いお話です。文章を理解するにもそれなりの似た知識がいると思うのですが(論文など)、一般の方々がさらりと読めるように工夫されていることが伝わってまいります。ムムム……勉強になります。
設定、効果的な台詞の選択、風景や登場人物の動作など具体的に頭に浮かぶ描写が的確にあり、ラノベ界隈では机に座っていたのがいつの間にか床に座っていたりとかの例ですが、そういうミスがなく、さすが理屈の頭脳ですと感動しながら読んでおりました(私は短いながらヘルプで大学教員をしたことがありますが、何となく作者様に色々と察する共通スキルを感じました)
結果、見つけてから拝見し、追いつくまでに随分と時間が掛かりました。速読は学んだはずなのに、いやぁ、物語が濃いです。精密です。これが無料!
読み専が長い私もスコッパーみたいにやっていましたが、今回は特に充実した時間を過ごさせていただいております。ありがとうございました。引き続き物語を楽しませていただきます。