二十歳の夏

Rie

— 忘れもの —

---


はじめまして やわらかな朝


段ボールを いくつも運び出すたび

床に残る 薄い日焼けあとに気づく


ベランダ越しに見える街並み

——こんな景色だったわ

あの人と暮らしだした部屋によく似てる


二十歳の夏でした

カーテンを張って 時計をかけて

小さな毎日が 眩しくて

触れるものすべてが 宝物だった


愛しあってた いくつもの夜

手をつなぎ 夢をはなしたね

ふたりで過ごす日は決して終わらないと思えた


——こんな音だったわ 

ドアが開く

ただいまと微笑む あの人が見える


胸を刺すほど なつかしくて

まだ覚えてる まだ思い出せる


ねぇ、今どうしてるの

元気でいるの


あのさよならは やっぱりまだ

痛いまま ここに残っています


— 思い出は 引越せずに —


もう思い出。

ただ思い出。



---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二十歳の夏 Rie @riyeandtea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ