第10話 草原に芽吹く希望

 朝日の光がゆっくりと草原を照らし始めた。風は穏やかで、草の葉先が軽やかに揺れる。俺様澤島アギトは、今日もグリドリーとともに伐採と草刈りに汗を流していた。手が土で汚れ、体は疲れているが、それでも胸の奥には新たな国を作り上げる確かな実感があった。


「アギト様、こちらへ来てくださいにゃ」


 魔法猫ティータの声に振り返ると、半透明の体を揺らしながらテスが草原の一角を指差していた。


「これは小麦の苗?」


 見ると、まだ小さな緑色の芽が地面から顔を出している。


「こんなところに、小麦が生えているなんて」


「俺様は初めて見た。テス、このまま放っておいてもいいのか?」

「いや、これを増やせば、食糧確保の心配も減るはず。でも私、人間の作物の育て方は詳しくないのよ」


 テスの半分は幽霊の体。でも元人間だと思うのだがとはアギトは突っ込まないでおいた。


 俺様はそっと苗の根元を触ってみる。土は乾いておらず適度な湿り気があったが、まだまだ育つには物足りない。


「ふむ、まずは水やりか。土壌の肥沃化も必要だろうな」


 毎日伐採と草刈りで忙しい中、作物のことはまだ初心者だ。何をどうすればいいのか、手探りの状態だ。


「俺様、これからは作物のこともちゃんと考えなきゃならないな」

「アギト様ならできるにゃ。何しろ話術も積み上げスキルも完璧だにゃ」


 ティータが頭をくるくると振りながら励ましてくれる。

 俺様は空を見上げて、ふと思った。


「もっと効率的に作物を育てられれば、国が安定するだろう。時間もかけられない。魔法の力で何とかならないか?」


 その時、不意に胸の奥で新たな力が芽生えた感覚が走った。


【レベル6→7】に上昇して。

【スキル:作物成長】を習得しました。


「ん? 何だこの感覚は」


 両手をかざすと、手のひらからさらさらと清らかな水が流れ出した。思わず驚きながらも、その水を小麦の苗にかけてみる。

 すると驚いたことに、苗がみるみると大きく成長していく。若葉が青々と光り、茎が太く伸び、周囲の土が生き生きとしていくのがわかった。


「こ、これは!」


 俺様は歓喜した。ついに新しいスキル『作物成長』を獲得したのだ。


「これならば、短時間で大量の食料を確保できる。国の土台も、より盤石になるだろう」


 テスも目を輝かせて言った。


「素晴らしい、これでこの島にも希望の種がまかれたわね」


 だが、その日はいつもの伐採や草刈りの疲労も重なっていた。手から放つ水の力を使いすぎると体力が減ることに気づき、無理はできないと自己制御も始めた。


「くそ便利なスキルほど、使い方に気をつけないとな」

 そんな思いを胸に、俺様はこれからの日々を想像した。


「まずはこの小麦畑を広げて、仲間のための食料を作らなきゃ。テス、マルルカにも相談しよう」

「はい、私も魔法の研究所で作物成長に役立つ魔法の研究を進めます」


 ベレナはいつも冷静で、でも前向きな目をしていた。


「そして鍛冶屋のマルルカは農具の改良を頼もう」


 その後、俺様たちは小麦の苗がある草原のそばに、少しずつ土地を開墾していった。切り倒した木の枝や葉を丁寧に片付け、耕す場所を確保する。

 夕暮れが迫り、空は茜色に染まり始める。草原の風がやさしく吹き、穏やかな鳥の鳴き声が響く。


「さあ、明日からは本格的に畑仕事だ。国造りはまだまだ始まったばかりだが、確かな一歩を踏み出せた気がする」


 俺様はそうつぶやき、夜空に輝く星を見上げた。

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誰でも受け入れるって言ったよね? ~平和を目指して建国したら、世界の脅威に認定されました~ AKISIRO @DrBOMB

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