おわりに

 以上が、同僚である鳴海恵から送られてきたチャットログと、私が個人的に集めた資料の全てです。

 カルナタワー正面入口のライブカメラに映った鳴海さんの飛び降りた遺体の映像は、あまりにもセンセーショナルなものでした。ライブ配信は即座に中止されましたが、多くの方がその瞬間を目撃してしまったかと思います。

 鳴海さんは事件の真相について独自の仮説をまとめ、関連資料とともに私に送ってくれました。しかし、それが真実なのかどうか、私には判断がつきません。一人で抱え込んでいても答えは出ないと思い、ログをまとめて公開することにしました。

 本来であればログをそのまま掲載するのではなく、状況説明や補足を加えるべきだったのかもしれません。ですが、私が関わっていない場面での発言も多く含まれており、推測で内容を補完するのは適切ではないと判断し原文のまま記載させていただきました。

 また、チャットには適切ではない言葉遣いや不適切な言動が含まれている箇所もありますが、当時の状況を正確に伝えるため、そのまま掲載しています。ご了承ください。

 あの日、私は午後9時になってようやくエレベーターから解放され、そのまま帰宅しました。後日知ったことですが、停止した6基のエレベーターのローラー部分には、6つの人体組織片が絡まっていたとのことです。報道でもご存知の方がいるかもしれませんが、後の捜査でその人体組織は来社予告をしていた長野県在住の男性のものと判明しました。

 もし鳴海さんの仮説が正しいとすれば、カルナタワーに落雷が発生したその瞬間、タワーに強い恨みを抱く二人の人物が屋上に呼び寄せられたのかもしれません。そして男性は、三弥子さんとの対峙に敗れたのでしょう。

 私はあの恐ろしい体験以来、一度も出社していません。退職手続きもPC返却もすべて郵送で済ませる予定です。事件から1か月が経った今でも、あのビルに足を向けることはできそうにありません。

 「はじめに」で触れた通り、この事件についてはさまざまな憶測や噂が飛び交いました。しかし、実際に現場にいた私たちにとって、これは単なる都市伝説やホラー話ではありません。リアルタイムで交わされたチャットログが示すのは、私たちの生々しい恐怖と混乱、そして失われた同僚への想いです。

 最後になりますが、SNS、掲示板、動画サイトなどで鳴海さんの遺体の写真や映像が出回っています。もしそうした投稿を見かけた方は、拡散や保存をせず、速やかに通報していただくようお願いいたします。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 亡くなった同僚たちのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

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渋谷カルナタワー事件ログ 相良徹生 @jmnitetuo

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