9 大団円
白いチューリップハットを
翌日、
昨日の夕方に
「ふむ。
わたしは常温の緑茶を入れた水筒を肩から下げ、ハムと卵とトマトのサンドイッチを多めに詰めたケースを、小さなリュックに入れた。
今日は交差点の歩道橋を渡って、森のひとに会いに行く。行商人の旦那さんと森の奥さんがどんな姿をしているのか、この大きな
門の扉を開けると、通りの向こうに前かがみのお婆さんと、人の
「今日は仕事があるので失礼します」
「その右手に持った釣竿に見えるものは何じゃ? 帰りに
わたしは裏道を通って行く事にした。
視力を手に入れ、当初は目に
交差点の信号は青だったが、
階段を数段飛ばしながら頂上まで上った。歩道橋から見える景色と涼しい風が心地いい。帽子が飛ばないように、
通路の中央に白いチューリップハットを
ブルーシートの上に
「おや、この
男の人はキョトンとした表情で言った。
わたしは小さなリュックからサンドイッチケースを取り出し、ふたを開けた。塩気を含んだハムとトマトの
「ハムサンド以外をどうぞ」
男の人はゴクリと
「ふむ。素材の味を最大限に引き出している。そして口の中で
わたしは足元の犬にもハムサンドをあげた。ガツガツと食らいつき、あっという間に無くなってしまった。
「奥さんにハムサンドを食べてほしいから、森に寄せてもらってもいい?」
「もちろんだ。妻も喜ぶ」
男の人はスマートフォンを取り出して連絡してくれた。森の入り口で、出迎えてくれるそうだ。
「ハムサンドは
あまりの勢いに圧倒されながら、わたしはケースを開け、サンドイッチを差し出した。
「好きなだけどうぞ。この間、持て
「承知した。それでは遠慮なく戴くのじゃ」
森の奥さんは最初にハムサンドをよく噛み締め、じっくりと味わった。そして卵とトマトとハムの三種類のサンドイッチを同時に
「このハムの濃厚な塩気と卵の旨味、そしてトマトの瑞々しい酸味。それらを包み込むしっとりもっちりとした生地が
気がつくと、足元には目が無い犬が尻尾を振ってすり寄って来た。お
「こら、さっき
森の奥さんは犬の
その時、わたしの瞳から大粒の涙が止めどなく流れ出した。目と鼻が充血し、
「どうしたのじゃ? 何か悪い物でも食ったのか?」
突然泣き出したわたしに、森の奥さんは戸惑い、抱きかかえてあやすしかなかった。
私は六時に仕事が終わると、その足で古池公園へ向かった。ダビデの奥様
正直仕事に身が入らなかった。しかし今日だけは大目に見てもらおう。
古池の
スー、とん、とん、とん、と
へび口に釣り糸を結び付け、ウキ止めと重りを付ける。そして
大きく深呼吸をしたあと、毛鉤を池に
少し水中に
「フッフッフ。じっくり
悪代官のような笑いを浮かべ、私は黄金の
遠くの方で、のんびりとした
とりとめのない話 シッポキャット @sippocat
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