導火線を切り続けて

@mazurapu

導火線を切り続けて

 感情は、爆弾へと続く、導火線みたいなものだ。




「お母さんみてみて! 前回より点数が伸びたんだよ!」

「クラスで8位? 崇ならもっと上を目指せるはずよ。もっと頑張りなさい」




「これ送ったら、返信来なくてさ……」

「お前これはヤベェってw こんな想いの伝え方じゃ引かれるに決まってるだろww」




 感情のままに行動すれば、必ず痛い目を見る。




「小説家もいいなと思って、試しに小説を書いてみてるんだ」

「ふぅん……。これ全然面白くないわよ。小説家なんてやめなさい」




『もしこの世界線なら、こんなセリフとか言いそう!』


『これ見たときめっちゃ笑ったわwww』

『痛すぎwww』




 だから、湧き上がる感情をうまく遇らいながら生きていかなければならない。

 導火線を、切るように。




「崇、携帯はお父さんと買いに行きなさい。詳しい人と行った方がいいんだから」

「崇、携帯は母さんと買いに行きなさい。詳しくない人と行くからこそ、勉強になるんだ」

 隣にいるんだから、普通に会話すればいいのに。

 まぁでも、衣食住あるだけで十分だよな。

 家族団欒まで求めるなんて、間違ってるよね。


「一人で行ってくるよ。二人とも忙しいんだから、気にしないで」




「え? 僕の小説を読んだの?」

「は、はい。ぶつかった時にノートが入れ替わってしまったみたいで……。でもその……読み始めてしまったら、すごく響く作品で引き込まれて……、一目惚れしてしまったんです!」

「は、はぁ」

「それで、もっと崇さんのことが知りたくなりました! どうか、お付き合いしていただけませんか……! お友達からでいいので……」

「……」

 いや、僕の小説が面白いわけがない。前に面白くないって言われたし。

 真に受けてしまっていたら、お互いのためにならないところだった。あぶないあぶない。

 きっと彼女はあまり本を読んだことがないんだ。それか体調が優れなくて、変なものが良く見えちゃったとか。きっとそうに違いない。


「ごめん。多分僕は君を幸せにすることはできない」

「そ、そんなこと──」

「それに、僕ムリなんだ。他人のノートを勝手に見るような人」

「っ……、それ……は……」

「きっと面白半分で読んだんだろうけどさ。僕が小説を書いていることは言いふらさないでほしいな。大学生にもなってそんなことするなんて、子供だよね」

「……」




「辛くて死にたくなるようなこともなかったし、悪くない人生だったな」

 本当にそうか?

 やり残したことはなかったのか?

 もっと幸せな人生を歩めたんじゃないのか?


 あー、はいはい。

 いつものように、導火線を切る。


「あー、幸せな人生だったー」

 僕は病院のベッドに身を投げた。

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