第5話
「ここからどうするか……」
突如始まった魑魅魍魎が跋扈する無人島でのサバイバル。そんな中、俺はこの先どう行動すべきか考えていた。
とりあえず最優先は安全地帯の確保だろう。奴ら……妖は日中、あまり行動はしないが日が暮れると活発に動きだす──まぁ、日中でも行動するタイプはいるにはいるのだが……──
そんな妖が動き出す夜に、外で野宿はバカのやることだ。そんなことを考えながら、俺は一人で森の中に入ろうとして──
「ねね!」
森へと歩を進めようとしたところ、知っている声が俺を引き留める。
「私も連れてってよ」
声の方へと振り向く、そこにはやはりというべきか世那がいた。
「これからの事なんてわからないけど、一人でいるよりかは二人でってね!」
「そうか……森に行くから、ついてくるなら気をつけろ」
そういいながら俺は森の中に入る。入った感じそこまで木は生えていなく近くに川が流れていた。
見たところ周囲には山菜が生え、川の中には魚が泳いでおり二日三日分の食料ならば問題は無さそうだ。
「彼方! あそこに!」
俺が食料面の事を考えていると、世那がびっくりしたというような声を出す。気になって世那が指さした方向を見る。そこには……古びた廃家が建っていた。
「こんなところで人が住んでたのか?」
こんな妖が跋扈する島で過去に人が住んでいた? そんなこと可能なのだろうか? もし可能だとしたら?
そいつはどうやってこんな電気も通って無いところで生活していた……暴れまわる妖に対してどうやって生き残っていた? Aランクもの妖をどうやってしのいでいた?
「……とりあえず入ってみようよ」
「ああ……」
世那の声を聴き、一端思考を止めて廃家のドアを開ける。
中には結構な年数、人が入っていなかったのか埃がたまっている。家具も所々虫食いが発生しており年単位で人がいなかったのだろうことが分かる。そして何よりも何かが暴れたかのような痕跡も見えた。
そんなことを考えながら部屋を一つづつ探索していると……
「……彼方これって……」
「……ああ」
その部屋には異様な雰囲気が充満していた……。
その事に気づいたのだろう……世那が震えながら俺の服を握る。
部屋の中を詳しく見ると、この異様な雰囲気の原因がすぐに分かった。……奇麗だったのだ。あまりにもこの部屋は小奇麗すぎた。まるでここだけ作り直したかのように……逆に天井には血がべったりと付いている。だがこの血痕も付着してからかなり時間が経ったのだろう、黒くなり固まっている。
何故この部屋だけ? この部屋に隠したい何かがあるのか? ……だとしたら誰が、何のために……。
目の前の奇妙な光景に疑問が沸々とわいてくるが、ここで延々と考えても仕方がない。わいてくる疑問に蓋をして俺は世那と一緒にこの廃家から出た。
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あの廃家から出た俺たちは周辺の探索を少ししてから、最初に見つけた川の近くに立っていた。
「よし、あそこの魚を取って昼食にするぞ」
「よーしっ! この釣り名人の手腕を見せてあげる!」
「道具はないから、手づかみだけどな」
「えー……初めての釣りができると思ったのに~」
「初めてじゃねえか! どこが釣り名人だよ……」
そんなやり取りをしながら裾を捲り、川に入る。そして魚の後ろ側から静かに近づき……とる。
「あっ! 彼方上手いね! もしかして経験者?」
「いや、今回が初めてだな……」
「へ~……そうなんだ……。よし! 彼方も捕まえたことだし、私の華麗な手捌きを見せてやろ~う! えいっ! や! あっ逃げられた~!」
「華麗、ね……」
そうして何回か同じことを繰り返し二人分とれたので川から離れようとして……
「てやっ!! て、あちょ!」
俺の近くで魚を取るのに悪戦苦闘していた世那が体勢を崩して、魚を集めといたバケツをひっくり返す。──このバケツは先程の廃家にあったものだ──
「……おい」
「いや~……。人間、間違える時もあるよ! だから気にせずもっかいやってこ!!」
「いだっ!」ゴッ
「それは失敗した奴が言うセリフじゃねえ」
とりあえず魚を逃がした下手人は一回拳骨を落としておく。
「……はぁ」
「いたい! 女の子殴った!! 謝るべき案件だよこれは!!」
頭を押さえながら騒ぐ世那を無視して再度、川に入る。
いつ終わるかもわからないサバイバル。
その一日もまだ終わってないのにこの始末。未だ、ギャーギャー騒ぐ世那を横目に一緒に来る相手を間違ったかもな……と俺はため息を吐くのだった。
^^^
あれからもう一度魚を取って食べ終わるころには日も落ち始め、後数刻程で完全に日が落ちる時間になっていた。
「これからの動きだが……拠点はここに設定する。ここはある程度、見晴らしもいいから敵が近くに来たら気づきやすいだろう」
「あと、いつ敵襲があってもいいように睡眠は二時間交代で起きてる方が見張りをやっていこう」
食べ終わるころにはもうこの時間。今から散策し直して拠点を探すのは時間が足りないだろうと、俺たちは先程まで魚を釣っていた場所を拠点にした。
そうしてこれからの事を話し合い、俺たちは拠点の周りに罠を仕掛けている──罠と言っても仕掛けているワイヤーに身体を引っかけたら音が鳴るという、簡素的なものだが──
「ここまでやったら十分か……。ここらへんで終わりにしよう世那」
ある程度仕掛け終えたところで見切りをつけて、世那にもう十分だと言おうとしたところ。
「てい!」
そこには、世那に向かってとびかかる妖とそれを対処している世那がいた。
数は6体くらい……それもDからCの低ランクだろう。そう考えながら腰につけている短刀で、世那の周囲にいる妖を切る。
一撃いれただけでよろける妖……そのまま追撃を入れて完全に消滅させる。
そのまま次の妖へと標的を定めて……。
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あれから世那と協力して残りの妖を片付けたわけなのだが……
「もぉ~、何であれから増えていくのかなぁ! 乱闘なんてスマ〇ラで十分だよ!!」
そう……あの妖を倒したところ一体、また一体と増えていき乱戦状態になったのだ。
「もうやだ! 寝る!!」
「はぁ……疲れた寝るのはいいけど、罠を張り直してからだな」
「あああああ!! もーやだ! あいつらのせいだ~」
叫びだしたかと思えばシナシナ状態になる世那。それを見て、俺は周りの状態を見る……。
そこには先程の戦闘の影響で全滅した罠と所々凹んでボコボコになっている地面があった。
「はあ」
その惨状を見てため息を吐く。確かに日が暮れている中、全部の罠を張り直すのは少々……いや、かなりめんどくさい。
億劫になってきたな……と思う中、俺は重い腰を上げようとして……。
「……ねえ」
「なんだ? 寝たいっていうなら、これが終わってからにS……」
「一つ思ったんだけどさ、さっきあいつらが出てきた時これならなかったよね……」
「…………」
床に落ちている先程仕掛けた罠であろう残骸を指さす世那。
「後一つ……あいつらがわいた時。これ……なった?」
「…………」
先程指さした物を今度は拾い上げて言う。
「この点をを踏まえてさ……。これ……いる?」
「よし。早く片付けて寝よう」
知らない。1~2時間せっせと仕掛けたものが役立たずなんてことは知らない。廃家や続々とわいて出た妖の事もあり、疲れて頭が回らない俺は廃家から拾ってきたボロボロの布切れを頭から被る。
知らない! キャラ崩壊なんて知るか!! もう寝る!!!
「あ~! ちょっと、私が最初に寝るんだってば―!!」
俺のことを揺さぶりながらそういう世那を無視して、俺は夢の世界へ逃げるのだった……。
〖代償讐結〗~妖や妖怪がいる世界で異能を持たない俺は、できうる手段全て使って妖を狩る~ ミタケ @Siki21
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