【Prologue】 : Lamentation sous la lune teinte en rouge




氷の時代の冷たい夜風が、

王都トゥルゴヴィシュテの石畳を撫でる。


闇に沈む路地裏には、

遠い昔に忘れ去られたような

熱を帯びた血の香りが漂っていた。


_終わりなき孤独の果てに、愛は悲劇となる。


彼女の名はエリーゼ・ヴィーゲルト。


貧民街の舞台から這い上がり、

つかの間の王妃となった金髪碧眼の少女。


その美貌は、

氷に覆われた世界に一輪の薔薇を咲かせたようだった。


だが、その花は無惨にも刈り取られた。


娼館の暗がりにて、

嫉妬と憎悪に狂った娼婦の手により、
 

エリーゼは無残に命を散らす。


漆黒の夜が彼女の叫びを飲み込み、

紅い血が静かに石畳を染めた。

その血は、果てなき悲哀と呪詛の証。



「……オルフィ…さま…」


彼女の最後の声は、月光の下で震えながら消えていった。



____狂気の序章は、ここから始まる。


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Mariée du salut @kyubike

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