透明な君へ

@Solo0222

第1話

窓の外には真っ青な空が広がっている。

3限の古典の授業で空腹とつまらなさであくびが出る。

せっかくの真っ青で美しい空が涙で滲む。

ようやくチャイムが鳴り響きメガネをかけた堅苦しそうな先生は教室を後にした。

茶髪のいかにもチャラそうなやつがこっちへ足音を立ててやって来た。

「なぁ純一!今日放課後カラオケ行こうぜ!あの二組の佐藤さんもくるらしい、話して見たかったんだよな、ラッキー!なぁ!お前も来るだろ?」

そう言って俺の前に座って来た。

はぁ、面倒臭い。

「いや、やめておくよ。今日バイトが入ってて。」

いつからこんな平気な顔をして嘘をつけるようになったんだろう。

僕は申し訳なさそうな顔をしながらクラスメイトである鈴木の誘いを断った。

すると黒髪ロングの制服を着崩した、いわゆる…清楚系ギャル?の高田が横の席に座ってきた。

「えー、純一来ないの〜?じゃあ、うちもパスかな〜」

ばか、やめろ!そんな子言うと気まずい空気になるだろう!

高田の甲高い声は狭い教室ではよく通る。

「高田って純一のこと好きなのかよ、てかお前高田来なかったらバスケ部の高岡先輩来ないぞ?お前の友達冷めちまうぞ?いいのか?」

そう言って鈴木は子犬もような大きな丸い目で俺らを上目遣いで見た。

鈴木のことは正直あまり好きではない。趣味が合うわけでもなければ関わりもそこまでない。でも彼はいつも僕のことを気にかけてくれる。今だって空気を明るくしようとこんなにしっぽを振って見つめてくれるんだ。断れるわけがない。

「バイトのシフト、友達に変わってもらえないか連絡してみるよ。カラオケ、楽しみだね。」

そう言って笑いかけると鈴木は立ち上がって喜んでくれた、まぁ本当は今日バイトなんてなかったのだけど…。

「純一行くの?えーじゃあうちら一組で3人で行こ?」

高田は言いながら俺の腕に自分の腕を絡めてくる。

「ほら授業始まるよ?席すわんないと」

すかさず僕は腕を振り払い高田の目を優しく見つめた。

2人は自分の席に戻っていった。

やっぱり人生ってちょろい。

正直僕は恵まれていると思う。スタイルも顔も昔からもてはやされてはいる。鈴木もチャラいがとてもかっこいいしなんだか雰囲気が大人っぽい、高田はクラスのマドンナなんて言われているらしい。

他人の評価なんて馬鹿馬鹿しい、僕は自分の顔が嫌いだ。自分の顔を見ると親と似ていくことが顕著にわかってしまう。それにあいつらが僕に関わるのもきっと僕のスペックしか見ていないのだろう。

はぁこんなこと考えても無駄だ。やめておこう。

そう思って僕は現代文のノートを開いた。

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