第20話 「おかえり、相棒」
あれから一週間。
翔太は廃品置き場で、レックスと向き合っていた。
「なあ、レックス」
「なんだ」
「まだ透けてるよな」
「計算によると、完全復活まであと73.6時間」
「長っ!」
ギアたちは少しずつ回復していたが、まだ完全じゃない。触ることもできないし、一緒にご飯も食べられない。
「つまんねー」
翔太がブーたれる。
「我慢しろ、脳筋」
「レックスだって、焼肉食いたいだろ?」
「……否定はしない」
そこへ、仲間たちがやってきた。
「翔太ー! 大ニュース!」
ショウが何かを持って走ってくる。
「Dr.ヴォイドから、これもらった!」
小さな装置だった。
「なにこれ?」
「ギアを完全に戻す装置だって!」
「マジで!?」
みんなが集まってくる。レイナが説明を始めた。
「でも、条件があるの」
「条件?」
「人間とギアが、命を分け合うんだって」
重い言葉だった。
「つまり、一生離れられなくなる」
沈黙が流れる。
一生、か。
「やる」
翔太が即答した。
「はやっ!」
「だって、もともと一生一緒にいるつもりだし」
翔太はレックスを見た。
「な?」
「……まったく」
レックスは呆れたような、でも嬉しそうな顔をした。
「脳筋の相手は疲れるんだがな」
「へへっ」
一人、また一人と決意を固めていく。
「私も、ヴァルキリーとずっと一緒にいたい」
「俺も、ファングとな!」
「ルナとは、もう離れたくない」
みんなの気持ちは同じだった。
「よーし!」
翔太が装置を持ち上げる。
「みんな、行くぞ!」
「おう!」
装置が起動し、まばゆい光が辺りを包んだ。
――光の中。
翔太はレックスと向き合っていた。
「よう」
「よう」
二人は笑い合った。
「なあ、レックス」
「なんだ?」
「ずっと一緒だぞ」
「分かってる」
レックスが手を差し出す。
「こちらこそ、よろしく頼む。相棒」
翔太は、その手をがっしりと握った。
温かい。
本物の、レックスの手だ。
光が弾けた。
――現実世界。
「うおおお!」
翔太は思いっきりレックスに抱きついた。
「重い! 離せ!」
「やだ! 久しぶりなんだから!」
「だからって、抱きつくな! 暑苦しい!」
でも、レックスも抱き返していた。
周りを見ると、みんなも同じように再会を喜んでいる。
「ヴァルキリー! 会いたかった!」
「レイナちゃーん! きゃー!」
女子組は抱き合ってキャッキャしている。
「ファング! 久しぶり!」
「ショウ! また無茶できるな!」
男子組は肩を組んで笑い合う。
「これで、本当のG-CORE復活だ!」
翔太が拳を掲げる。
「次の大会、優勝するぞ!」
「おう!」
みんなの声が重なった。
――一ヶ月後。
ARコロシアムは、熱気に包まれていた。
「さあ! 注目のカード! 完全復活G-CORE対、新生チーム・ゼロ!」
実況の声が響く。
フィールドに立つ翔太とレックス。向かい側には、レンとオロチ。
「手加減しないぜ!」
「望むところだ」
火花が散る。
でも、二人とも笑っていた。
試合開始のゴングが鳴る。
「行くぜレックス! バーニング・ストライク!」
「ダークネス・クロー!」
技がぶつかり合い、歓声が沸き起こる。
観客席には、家族や友達、そしてDr.ヴォイド――いや、虚月博士の姿もあった。隣にはシエル。
「頑張れ、みんな」
博士は優しい目で見守っていた。
激しい戦いの末、引き分けに終わった試合。
でも、みんな満足そうだった。
「いい勝負だった!」
「ああ! また戦おう!」
握手を交わす翔太とレン。
夕日に照らされながら、翔太は思った。
ギアがいて、仲間がいて、ライバルがいて。
最高じゃないか。
「なあ、レックス」
「なんだ?」
「腹減った」
「……試合直後にそれか」
レックスは呆れたが、すぐに続けた。
「焼肉でも行くか」
「マジで!? やった!」
翔太は飛び上がって喜んだ。
「みんなー! 焼肉行こうぜ!」
「おう!」
ギアも人間も、みんなでぞろぞろと焼肉屋に向かう。
レックスが肉を焼き、ヴァルキリーが野菜を勧め、ファングが大食い対決を始め、ルナがいたずらでワサビを仕込む。
賑やかで、楽しくて、幸せな時間。
「これからも、ずっとこうだといいな」
翔太がつぶやく。
「ああ」
レックスが頷いた。
「ずっと、な」
外では、新しい冒険を予感させる風が吹いていた。
でも今は、この瞬間を楽しもう。
相棒と、仲間と、一緒に。
物語は、ここから始まる。
(第一部・完)
相棒ギアとバトれ!G-CORE ~最悪の出会いから始まる最高のチーム戦記~ ソコニ @mi33x
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます