耽美的な退廃的な美しさ

春の日の内なる鳥は飛び立てず重層なりし籠の中にをり

例えばこの1首。
ただの籠の鳥ではなく、重層の籠の鳥という表現に、
作者のセンスを感じます。

作中に登場する「あなた」も、
生きているのか、死んでいるのか、幻なのか、
ミステリアスで想像をかき立てられるのです。

耽美的な世界と退廃的な世界が融合した、
秀逸な短歌集でしょう。

推し短歌1首。

明滅する陰画のごとき花筏夢の果てへと消え去ってゆく