青の記憶

狼星 格

青の記憶

ランドセル あした一緒と 決めた午後

はじまる前の 夏がにおった

塩素めく タイルの匂い むせ返る

誰にも見せぬ キックがひとつ

ソーダ玉 うまく開けられず あせる指

ビー玉ごしに 青空が割れ

花火みて 隣にいたのに 言えなかった

君の浴衣が 煙にまぎれた

ひぐらしが 鳴いてる声を ふりかえる

そこにきみいた 気がしただけで

台風が なにかを置いて 去っていく

きみの不在に 気づく匂いだけ

プールから あふれた水が 乾く午後

ひかりのあとに わたしがいない

駄菓子屋で 当たりの棒が 残ってた

食べそこねたら 思い出になり

海のなか 声がほどけて きえていく

きみの名前を 呼ばなかった日

うすべにの 山がゆれてる 帰り道

青の記憶が まだ胸にいる

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青の記憶 狼星 格 @itaru_kamihoshi

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