口からこぼれる得体のしれない「それ」
- ★★★ Excellent!!!
「あれ」「これ」「それ」といった言葉を使ったことのない人はいないでしょう。
そんな身近な「言葉」が呪いとなって現れてしまったら。
今作における恐怖は、私たちの口からこぼれる言葉そのもの。身近であるがゆえに主人公の気持ちにとても共感ができ、彼の苛立ちや不安、恐怖を同じように感じてしまいます。
言葉が通じない苛立ちと恐怖、友情とともにわずかな希望が生まれたかと思えば、また絶望に落ちてしまい、最後に覚悟を決めた主人公が呪いと戦う場面は胸が熱くなりました。
日常生活の中、ふと自分の口から「あれ」とこぼれる言葉に恐怖するようになってしまう。私のすぐ隣にある恐怖を感じてしまうとても面白いホラー小説でした。