『アッカ・N・ベー』 下


 極めて険悪なムードが、あたり一面に広がった。


 しかも、亡霊同士である。


 『風よふけ〰️。嵐よまえ〰️〰️!』


 と、ふたりの指揮者が、天と地から、相互に叫び続けた。

 

 あらゆる木の葉っぱはもとより、太い枝などもちぎれて飛び出した。


 聴衆は、逃げ出したいのだが、『恨みます広場』の周囲には、あまりにも怪しいものたちが、ぐるりと取り巻いていたのである。各種の魑魅魍魎さんたちである。


 どうにもならない。


 ついには、森の木が、幹から根こそぎ引き抜かれ、飛び交う始末となったのである。


 『おぎょわー。』


 やま・しんも、しん・やまも、地に身を伏せるしかなかったが、もう、身体を風に持って行かれそうであった!


 どびゃー。


 どびゃー。


 と、天空自体が、激しく吹き荒れるようである。


 その中を、ロッシーニさんの『ウイリアムテル序曲の嵐の場面』と、ベートーヴェンさんの『交響曲第6番・第4楽章』を、双方のオーケストラが目一杯、繰り返し演奏していた。


 そらも、凄い演奏だが、いっぺんに鳴らされると、もう、訳がわからないよ。



 『こりゃ、ロッシーニさんより、ベートーヴェンさんより激しい!』



 と、しん・やまが喚いた。


 まさしく、驚天動地のありさまである。



 そのとき早く、かのとき、遅れて!



 『か〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️ん!』



 と、1発、鐘の音が響いたのだあ!



 それは、双方のオーケストラを瞬間停止させるに十分なエネルギーであった。


 『あ!』


 『わ!』


 と、ふたりの名指揮者がうめいた。



 『はい。不合格〰️〰️〰️!』


 という声が、高々と響き渡ったのだ。


 ふたりの師匠である、ネルト・べ・ウングラー氏が、立ちはだかり、さらに、大作曲家、グスタフ・マーラーさんが、にたにたしながら宙に浮いていた。その、後ろには、巨大なブルックナーさんの頭が、雲の合間に見え隠れしている。



 恐ろしやあ!



 『ふたりとも、勉強しなおし。音楽の使い方が間違っている!』



 大地は、あっという間に静寂に返った。


 『あれ?』


 やま・しんが呆れたように言った。


 『だれも、いないじゃん。』


 しん・やまは、呆然と立ち尽くしていた。


 上空から、ひらひらとチラシが舞った。



 『ご来場ありがとうございました。お楽しみいただけましたか? また、よろしくね。また、来てね。』




         おわり




  🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇


























 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『アッカ・N・べー』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る