『アッカ・N・ベー』 中

  

 クラシック音楽は、近年ちょっと不調ぎみと言われている。


 理由は、良く分からない部分がある。


 社会が不安定化しているからかもしれない。


 なんとなく、ブルジョア然としたイメージが邪魔しているのかもしれないが、やま・しんは、そいつはいまや自分勝手なフェイクだろうと思っている。


 たしかに、むかしは、オーケストラの演奏会は高嶺の花だったが、いま、リサイクルショップに行けば、かつての名演奏CDを100ドリムから300ドリムほどで買えたりする。まあ、ライブとは、いっしょにはならないにしても、聴くことは簡単なのである。検証をしなくちゃだめだよ。うわさを信じるだけならパンダさんにもできるさ。


 しかし、これは、つまり、値崩れしている恩恵でもある。


 で、だから、お客さまが果たして、いるのか?


 と、思っていたら、こいつが間違いであった。


 この世は、アニメもドラマも社会も、疑似オカルト流行であった。また、メールとかは、やま・しんも使うが、しん・やまがどうかは知らないが、SNSとかいう妖しくも危険なグッズがいまや百花繚乱、回りに飛び回って、ほんに花盛り🎆🎆である。やましんは、近寄らないのであるが。



 だからなのか、『怨みます広場』には、かなりの聴衆が集まってきていた。


 


やま・しん


 『あんれまあ。意外や意外。たくさん来てるなあ。』



しん・やま


 『んだ。これだけ人間がいたら、幽霊オーケストラだろうが、幽霊指揮者だろうが、怖くないだべ。』(幽霊オーケストラ、幽霊指揮者は、れっきとしたオカルト的な音楽用語である。)



 まさに、じかんぴったりに、半分透けて見えるオーケストラの団員達がステージに現れた。


 コンサート・マスターがチューニングを敢行した。


 いつもの風景である。



 やがて、ざわざわと、聴衆が息を飲むなか、現れたのである(@ ̄□ ̄@;)!!


 大指揮者、亡き、アッカ・N・ベー氏で、ある!



 『わー。アッカんベー、アッカんベー!』



 聴衆から壮大な叫び声が上がった。


 アッカ・N・ベー氏は、口元だけで、小さくにやりとして、頭を下げた。


 聴衆は、大喝采したのち、再び、しずまりかえったのである。


 あの、つまり、微妙に震えるように、指揮棒が振り下ろされた。


 ベートーヴェンさまの『エグモント序曲』である。


 まるで、地獄の底から沸き上がるような、身震いするような音が聴こえた。


 聴衆は、震え上がったのであった。




     ((⛄))((⛄))((⛄))((⛄))((⛄))




 地獄の叫びと、歓喜と、絶叫が渾然一体となったような、凄まじい演奏であった。



やま・しん


 『す、すごい。』



しん・やま


 『し、しびれたあ。さすが、地獄おけ。』



やま・しん


 『地獄じゃないだろ。』



しん・やま


 『いやあ。これは、地獄べなあ。』



 

 

 盛大な拍手喝采があり、アッカ・N・ベー氏は、いったん、舞台そでに消えた。


 しかし、もはや、間髪を入れずに、またまた壮大な拍手のなか、再び現れた。


 こんどは、メイン・プログラム、チャイコフスキーさまの『交響曲第6番ロ短調作品74』、つまり『悲愴交響曲』である。



 『・・・・・・・・・・・・・・・』



 なかなか、指揮棒が降りない。



 緊張感がマックスになったところで、そいつは、見えないくらいに動いた。



 『ぼーーー』



 あの、どすぐらい、冒頭の、虚無の闇から現れるような音が、まさしく、遥かなあの世からやって来たのである。



 きょわ〰️〰️〰️、と、ふたりの身体が金縛りになる。



 『く、くゆしい。』


 声にならない声が、ふたりから発せられたのである。


 聴衆は、みなそうだったであろう。


 まさに、この世の音ではない。



 聴衆の命が危険にさらされている!



 そのときであった。


 『ははははははははははははあ。おろかなり、アッカんベー。』


 すると、天から光輝く長円形の輪が降りてきたのである。


 それは、次第に大きくなって行く。


 『なんだ! あれはあ?』


 『流れ星だあ!』


 『いや、お好み焼きだあ!』



 『いや、オーケストラだあ!』



 まさに。そいつは、もうひとつの、オーケストラであった。


 華々しい音楽を演奏している。


 メンデルスゾーンさまの『交響曲第4番イ長調』、いわゆる『イタリア交響曲』である。



 『はははははははははははは! きたぞ。アッカんベー!』



 『あ、あれは、パスカニーニさんだあ!』


 やま・しんが叫んだ。


 かつて、アッカ・N・ベー氏と、世界の人気を二分していた、大指揮者、故オットリーニ・パスカニーニ氏、その人である。


 『あわれなり、アマチュア指揮者よ。陰謀は破れたり!』


 すると、アッカ・N・ベー氏は、指揮を止めて言い返したのである。


 『なにおー。ここからが、本番なのだあ。消え去れ、悪魔め!』


 『ふん。生者をあの世にいただくつもりだったくせに!』


 『なにおー。きさまこそ、横取りにきたんだろ〰️〰️😃』


 『なにおー。おらは、正義の使者だ。諸君、こやつは、君たちの命を狙っておる。』


 『だまされるな。狙っているのは、あの、悪霊なり。フェイクを見抜きたまえ。』


 

やま・しん


 『あやあ! ややこしくなったぞ。』



しん・やま


 『しかし、これは、たいへんな見物だ!』



やましん


 『て、命を狙われてるのは、ぼくたちだろう!』



 事態は混沌としてきたので、ある。



     

     🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊ナミタカシ

























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