第6話 『もう、我慢しなくていいんだ』

キャラクター

莉子(Riko):20代女性。几帳面で完璧主義。

悠人(Yuto):20代男性。莉子の彼氏。穏やかで優しい。


場所

高速道路のパーキングエリア多目的トイレ、その後車内、そして莉子の自宅


SE:PAの多目的トイレのドアがガチャリと開く音。

莉子の切羽詰まった、しかし解放感への期待が混じった荒い呼吸音。

莉子の小走りする足音、焦りの混じった「ハァ…ハァ…」という息遣い。

莉子の服が擦れる音、股間を抑えながら走るような衣擦れの音。


莉子「(震える声で、切羽詰まって、そして微かな嗚咽)

っ、もう…っ、無理…!お願い…!

出ちゃう…っ、ああ…!

早く…っ、早く…っ!」


SE:トイレの個室の鍵が「カチャリ」と閉まる音。

莉子が急いでスカートを下ろし、座る衣擦れの音、

そしてシートに座る音。

そして、待ちに待った解放の音…

「ジャーッ…」と、水が勢いよく流れる音が、

長く、そして心地よく響き渡る。

莉子の苦しげだった呼吸が、無音中で、

ゆっくりと、深く、そして安堵に変わっていく音。

生理現象による、体からの「ああ…」という深い声が漏れる。


莉子「(大きく息を吐き出す音)

はぁ…ぁ…っ、あぁ…

もう…だめ…だった…。

こんな姿……もう、見られたくない……。」


ト書き:莉子の顔に、全身の力が抜けていくような、

とろけるような安堵の表情が広がる。

その顔には、まだ羞恥の残滓があるものの、

それよりも大きな解放感が勝っている。

体から緊張が溶け、肩の力が抜けていく。

瞳から、安堵の涙が静かに一筋、頬を伝う。


莉子「心の声:すっきりした…っ、本当に……。

あぁ…もう、ダメかと思った…。

こんな恥ずかしい姿、悠人くんに見られたけど……。

でも、もう、大丈夫……体が軽い……。

もう、何もかもどうでもいい……このまま溶けてしまいたい……。」


SE:水を流す「ゴォー」という音。

莉子が立ち上がり、軽く伸びをする衣擦れの音。

深く、深く、深呼吸をする音。

微かに、まだ体が震えている音。


ト書き:莉子はゆっくりと顔を上げ、鏡を見る。

そこには、少し涙の跡はあるものの、

心なしか晴れやかな表情の自分がいた。

まだ完璧ではないけれど、この解放感が何よりも尊い。

鏡の中の自分に、まだ羞恥の残る表情を向ける。


莉子「(小さく呟くように、涙混じりの微笑みで)

ふぅ…もう、ダメだった…全部出た…。

でも、不思議と気持ちいい……。

もう、見ないで……って言いたい……。」


SE:トイレのドアが「カチャ」と開く音。

莉子のまだ覚束ない、しかし少しだけ軽くなった足音。


ト書き:トイレから出てきた莉子を、

悠人が心配そうに、しかし優しい眼差しで迎える。

悠人の手には、温かいコーヒーが二つ。


悠人「莉子、おかえり。ゆっくりできたか?」


莉子「(少し照れながら、しかし安堵の笑顔で)

うん…ありがとう、悠人くん。

本当に…助かった……。

もう、ぐったり……。」


SE:温かいコーヒーの湯気立つ音。

PAのベンチに座る衣擦れの音。

莉子が深く、ゆっくりと座り込む音。


悠人「完璧じゃなくても、頼ってくれる莉子の方が好きだよ。」


莉子「うん…ありがとう、悠人。」


ト書き:莉子が悠人の肩にもたれかかる。

二人の間に深く、強い絆が生まれたことを

予感させる温かい沈黙が流れる。

夜空の星が、二人を優しく見守るかのよう。

莉子の顔には、まだ疲労と羞恥の余韻が残るが、

それよりも安堵が大きく上回る。


SE:鈴のキーホルダーの微かな音(余韻を残す)。

莉子と悠人の心臓の鼓動が、ゆっくりと、

しかし確かなリズムで重なり合うようなASMR効果。


ト書き:莉子の心は、完全に解放され、満たされていた。

長時間の移動による、身体の奥に残るわずかな不快感は、

もうほとんど感じられない。心の軽さが、全てを上回る。


SE:車のエンジン音(停止)、駐車場に停める際の

微かなブレーキ音。

車が完全に停止し、エンジンが切れる静かな音。


悠人「さあ、着いたよ。莉子の家だ。

お疲れ様、莉子。ゆっくり休んでくれ。」


悠人「荷物、持っていくね。

重いだろうから、俺が持っていくよ。」


莉子「ありがとう。さすがに疲れたわ。

もう、歩くのもやっとだよ。」


SE:エレベーターの到着音、扉が開く音。

エレベーターがゆっくりと上昇する微かなモーター音。


悠人「さあ、莉子の家だよ。

もうすぐ、温かいお風呂に入れるからな。」


SE:自宅の鍵を開ける「カチャ」という音。

ドアがゆっくりと開く微かな音。


悠人「さあ、莉子の帰る場所だよ。

おかえり、莉子。」


ト書き:莉子が玄関で靴を脱ぐと、

二人の靴が自然と寄り添うように並ぶ。

その光景に、莉子は心の底からの安堵感を覚える。

莉子の顔はまだ涙の跡で腫れぼったいが、

その瞳には穏やかな光が宿る。


莉子「ただいま…」


悠人「おかえり、莉子。」


ト書き:悠人は莉子の手をそっと握る。(この時点でのキスはなし)


莉子「…家に着いたらぎゅーしてね。今日のこと、

笑わないって約束してね?

全部、見られちゃったから…。」


悠人「莉子、おかえり。絶対笑わないよ。

むしろ、今日のこと、莉子の大切な日として覚えておくから。

どんな莉子も、俺は大好きだから。」


SE:優しく抱きしめ合う衣擦れの音。(この抱擁は「我慢後」の愛情表現)


ト書き:悠人は莉子の額にそっとキスをする。(このキスも「我慢後」の愛情表現)

莉子は悠人の腕の中で、心から幸せを噛みしめる。


莉子「心の声:笑わない約束より、抱きしめる約束が嬉しかった。

今日、私は悠人の全てを信じられるって思ったんだ。

恥ずかしい姿を見せても、こんなに愛されるなんて…。

もう、無理しなくていいんだ…。」


SE:目覚まし時計の優しい音。

カーテンを開ける音、朝の光が差し込む音。

鳥のさえずりが微かに聞こえる。


ト書き:翌朝、莉子は目覚まし時計の音で目を覚ます。

体は軽くなり、顔色もすっかり良くなっている。

莉子の顔には、「一晩中泣き疲れた顔」「彼にしがみついて離れられなかった」

という5話の余韻を引きずる描写が残るものの、

疲労や羞恥の影は一切なく、穏やかな笑顔が浮かんでいる。


莉子「んー…よく寝たぁ…。」


ト書き:莉子、ベッドから起き上がり、軽くストレッチをする。

体の隅々まで、昨日までの不快感が消え去っていることを実感する。


莉子「心の声:あれ…なんか、体が軽い…昨日までのしんどさが嘘みたい…

膀胱も、もう何ともない…。

もう、大丈夫なんだ…。」


SE:莉子の軽い足音。


ト書き:リビングに向かうと、悠人が朝食の準備をしている。

香ばしいコーヒーの匂いが部屋に満ちている。


悠人「莉子、おはよう。よく眠れたか?」


莉子「うん!ぐっすり眠れたよ。ありがとう、悠人くん。」


ト書き:莉子の心は穏やかで、昨日経験した極限状態が、

まるで遠い夢のようだと感じている。


莉子「昨日は、本当に、ごめんね…あんな姿、見せちゃって…。」


悠人「何言ってるんだよ。俺は莉子のこと、もっと好きになったんだからね?

あんな莉子も、可愛かったよ。

莉子が俺を頼ってくれたことが、何より嬉しかったんだ。」


ト書き:悠人の言葉に、莉子の顔が赤くなる。

しかし、そこにはもう羞恥だけでなく、

深い愛情と安堵が混じっている。


莉子「心の声:あの時、本当にどうしようかと思ったけど…

悠人くんがいてくれて、本当に良かった…

一人だったら、きっと潰れてた…

この我慢があったから、悠人くんの優しさにも気づけた…

我慢しなくても、好きでいてくれるんだって…わかった気がした…。

完璧じゃなくても、私は私でいいんだ…。」


ト書き:莉子の心に、昨日感じた極限の苦痛と、

それを乗り越えられたことへの感謝の念が強く湧き上がる。

あの「我慢」があったからこそ、

悠人との絆が深まったことを再認識する。


莉子「悠人くん、私、もう無理しない。

しんどい時は、しんどいって言う。

甘えたい時は、甘える。

全部、悠人くんに話すから。

だから、これからも、ずっと隣にいてほしい。」


悠人「ああ、もちろんだよ。莉子の隣は、俺の特等席だからね。

ずっと、俺が莉子のそばにいるよ。」


SE:二人の手がぎゅっと握りしめられる音。


ト書き:莉子は悠人の隣に立ち、そして、自然な流れで、トイレへと向かう。

その足取りは軽く、迷いはない。


SE:トイレのドアを開ける音、水を流す音。


ト書き:莉子の心は、完全に解放され、清々しい気持ちに満たされている。

もう、何も我慢することはない。


莉子「心の声:ああ、すっきりした…もう、完璧じゃなくても、大丈夫。

私は、私でいいんだ…。

悠人くんが、そう教えてくれたから……。」


引き:

SE:リビングに戻る莉子の軽い足音。


悠人「莉子、おかえり。」


莉子「ただいま、悠人くん。」


ト書き:二人の間に、温かく、満ち足りた空気が流れる。

新しい一日、新しい二人の関係が、今、始まった。


莉子(モノローグ、手紙調・語り口)

「あの時の私に、伝えたいことがあります。

我慢は、誰かに隠すことじゃない。

本当に大事な人の前では、弱くていいってこと。

悠人が教えてくれました。

だから私は、もう…ちゃんと“甘える勇気”を持って

生きていきます。

あの日の夜空を、私はずっと忘れないでしょう。

あの鈴の音も、ね。

あなたも誰かに甘えていいんです。」


SE:鈴のキーホルダーの微かな音(余韻を残す)。

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ねぇ、どうしよう…-渋滞中、限界なのに言えなくて- 五平 @FiveFlat

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