第7話:結婚式の控室

「俺は、おまえへ出逢えて、良かった」


 それから十年後の、摩耶子との結婚日。


 ここは、新郎新婦の結婚式の控室である。


 今日から、摩耶子の名前は、俺と同じ阿賀坂の姓を名乗った。もう、彼女に不潔そうな姿は見せず、女性のスカートを覗くこともしない。俺は、誰からも認められる好男子にまで成長したと自覚している。


「私の方こそ、あなたへ出逢えて、嬉しいわ」


「俺のこのスーツ姿は、似合ってるかい?」


「もちろん、とっても似合っていて素敵だわ」


「おまえの綺麗なウェディングドレス姿も素敵さ」


「あなたにそう言ってもらえて、嬉しいわ」


「すごろくをしてる日が懐かしいよな」


「すごろくを終えてから、規夫の身長は伸びて、顔も凛々しくなってるわ」摩耶子が言った。「十年前には、そこまで成長するとは思わなかった」  


 あれから十年間、気付けば、摩耶子のことばかり考えて過ごしている。理想の男子になるための努力は大変だ。しかし、彼女と結婚式を迎えるのに諦めないという気持ちが、いまの俺の姿になっていった。


「あと少しで、結婚を達成することもできそうだ」


「けれど、結婚式は、人生の到達点じゃなくて、新しい人生の始まりと噂に聞くものよ」摩耶子は言う。「今日を迎えさせてくれてありがとう。これからあなたには、私の夫として、責任を頼んだわよ」


「任せてくれ。ともに歩んでいこう」


「阿賀坂様、式の準備は整いました。ご入場ください」 


 結婚式の女性のスタッフにそう呼ばれる。


 俺たちは手を握って、見つめ合う。


「行こう、摩耶子」


「ええ、規夫」


 こうして、俺と摩耶子は、輝かしい結婚の式場へと、歩みだしていった。



                                【おわり】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デンジャラすごろく maco @mirokunoyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画