「影をとらえる」
人一
「影をとらえる」
「やっと届いたよ……なんか箱、黒ずんでるわボロボロだわで……これ中身大丈夫か?」
慎重に開封すると中には、やけに古ぼけたカメラが入っていた。
真っ黒なその見た目は、どこか冷たさを感じる。
「おー無事だ無事だ。いや~待ってたんだよなぁ、“PlyC社のAA-86”ポロライド風カメラ。」
カメラを手に取りまじまじと見つめる。
少しの埃を払いのけると、手にしっかりと伝わる重さを確かめる。
まぁ、年代物だし今の物ほど軽くは作られてないよな。
「では、早速……」
――パシャリ、と眩しいフラッシュが焚かれた後写真が出てくる。
「思ってたよりも綺麗に撮れてるじゃん。販売サイトで全然レビュー無くて不安だったけど、取り越し苦労だったな。」
それから一日中そのカメラを使って楽しんだ。
1枚だけ真っ暗で現像できていないものがあったが、少々の不具合なんて気にならなかった。
それ以上に、撮りたい物も風景も、しっかりと撮れていた。
とにかく、かなり満足がいく結果だった。
買ったばかりのお気に入りのカメラを楽しむ。
そんな他愛のない日常を過ごしていた、とある日。
「そう言えば、いつも風景とか撮ってばっかで人を撮ったこと無いな……
撮ってみたいけど、これに付き合ってくれる友達はいないし、道端で急に『あなたの写真撮らせてください!』ってのも、アレだし……」
あれこれ悩んでいるうちに、ふといい案が思い浮かんだ。
「そうだ!普通に自撮りすればいいだけじゃんか。」
そうと決まれば早速準備だ。
――パシャリ、と撮られた写真を確認すると酷くぶれていて、誰が写っているのかも分からなかった。
「流石に片手に持って撮るのは無理があったか……」
ちょっとブサイクだけど、目の前の台に置いて撮るか。
カメラを台に置き、シャッターボタンに手を伸ばして押す。
――カシャリ
シャッター音と共に、目の前が暗転した。
……なんだ⁉どうしたんだ?
意味が分からず狼狽えていると、淡い光が差し込んでくる。
余りの眩しさに目を閉じようとしたが……瞼が動かない。
しばらくして眩しさに目が慣れて、目の前の景色を見ることができた。
……そこには、無造作に男が倒れていた。
男?……いや、違う。
認めることができない現実がそこにある。
これは、……間違いなく、自分だ。
自分自身が倒れている状況を前にして、理解できず叫ぼうとするが口は動かない。
手を伸ばそうとするが、手も動かない。
目の前に落ちている己をただ、“見つめる”ことしかできなかった。
「影をとらえる」 人一 @hitoHito93
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