少年の記憶に焼き付く、赤い色。

主人公の少年が路地の迷路を行くのは、転校生の機嫌を損ねたらだ。

夏の日差しをかき分けて主人公が見たのは、
二階建ての立派なお屋敷が燃えている……といった幻想だった。
幻想の正体は「のうぜんかつら」の花だと、その家の住民である女性「ミチカ」に教わる。


詩的な文体に描かれているのは、
実は人間誰しも持っている不思議な体験のひとつである。

普段聞き慣れない表現や、言葉なので読み解くのに時間がかかったが、
その言葉も相まってより、異物な記憶が浮き彫りになってくる。

それだけではなくて、「ミチカ」の正体や、彼女の家の放火の真相、また主人公が「脳ぜんかつらの家」で見た出来事の全貌について考察させられる余韻もあり、
短い文章ではあるが文字数以上の読み応えがあります。

ご一読を。

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