それは一夏の物語、そして(手動)
ある日ミリアは何気なく空を見上げた。
「星が散っていて綺麗だ」
ユラは現実をまじまじと目に映す。
「都市ガスと街の光に隠れて、星なんてなかなか出てこない。殺風景だよ。」
ミリアは微笑んだ。
「それでも綺麗だよ」
「ユラ、ほら、そんな顔しないで。もっと一緒に遊ぼう」
彼女たちはともに暮らしながら、夏を歩んだ。ミリアは目に映すものに新鮮な感嘆を向け、ユラはその様子に幼き頃に取り落としたかもしれない、なにか純粋無垢な希望のようなものを思いだした。
いつの日か、ユラは屈託なく笑う日が増えた。
この世界は不条理だ。
でもそれでもいいのかもしれない。
ある日、夢のようにミリアは消えた。
貯めておいた書き置きも、夢だったかのように無くなり、様々なものがなかったように物事が置き換わっていた。
取り乱したユラは探し回り、思い詰めた末に古書店の店主に問い合わせるも、店主は
「はて、ぼんやりと覚えているが、ああそうか、分からんが…帰っていったのかなあ」
と曖昧な答えを呟いたのち、「わからないんだがね」と、前置きをおいた後、静かに涙を流した。
ユラはその様子に呆然とし、その後街のそこかしらからミリアの面影が消えていく様子を確認した。
ユラは、頬を伝う涙とともに、彼女が確かに居たことを、自分は忘れないと強く思った。
月日が流れ、彼女は人生を歩んだ。
沢山の人に見守られる中、まどろみが彼女を迎えにきた。
重くなる瞼、軽くなる体、心地よい倦怠感…身を任せ、る間に、肩を揺さぶられる感触が来た。
「どうしたの…」
うっすらと目を開けるとついぞ昔に見慣れたブロンド髪が視界の中で揺れた。
「ユラ、遊びに行こう!」
完
ユラとミリア 705 @705-58nn
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