朝焼けの10連短歌

只深 觸

朝焼けを染めることのは

1.

薄紅の 雲がほころぶ その時に


君に伝えぬ 言葉が滲む


2.

さよならを 云うべき時と 風が鳴る


朝焼けの色 胸に降り積む


3.

目を逸らす あなたの肩に 陽が差して


朝焼けだけが 嘘を赦した


4.

ひとしずく 落ちる涙が 空に染み


朝焼けだけが 知っていること



5.

夜明け前 白んだ空に 影が消え


わたしの中の 君が遠のく


6.

朝焼けの にじむ緋色に 触れたくて


泣きたいほどに いまが綺麗で


7.

夢の果て あなたの声が まだ残る


朝のひかりが 嘘に変えゆく


8.

さめぬ夢 きみを呼ぶ声 風に乗り

朱のはざまへ 消えてゆく影


9.

寄り添えど すれ違うまま 夜が明け

空にゆらめく 茜のためいき


10.

逢いたくて 逢えないままの 季節にも

朝焼けだけが 変わらずにある

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