新約 死神 ~ローグライトダンジョン脱出落語~
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
ローグライトダンジョン攻略落語
えー、世間ではローグライク、またはローグライトというゲームが流行してございます。
死んだら装備もスキルも最初からやり直しなのが、ローグライク。
かたや、死んでも永続的に引き継ぎされる、スキルなり装備なりがございますのが、ローグライトというのだそうです。
その要素を持ったダンジョンに迷い込んだ男が、本作の主人公でございます……。
勇者
「ふあっ。ここはどこや? うわ、オレ、身体がボロボロやないか。魔王との戦いは、えげつなかったもんな。せやけど、オレはなんでこんな状態でも生きてられるんや? そもそも、ここはどこなんや?」
SINIGAMI
「地獄や」
勇者
「うわ、どっから出てきたんや? だ、誰やお前は!?」
SINIGAMI
「ワシは、『SINIGAMI』や」
勇者
「死神?」
SINIGAMI
「ちゃうちゃう。発音がちゃう。シィ、ヌィ、ガァ、ムゥウィーッ」
勇者
「その、シニガムウィー様が、オレになんの用や? つーか、ここどこや?」
SINIGAMI
「さっき説明したやろが。地獄。ここはいわゆる、あの世やな」
勇者
「なんでや? オレは勇者やぞ。魔王を倒したけど、相打ちになったんやで? それでもヒーラーがおるさかい、すぐに蘇生してもらえるはずや!」
SINIGAMI
「それや。魔王はお前が復活できへんように、ゾンビ化の呪いをかけてしもーたんや」
勇者
「ゾンビやと!? うせやん」
SINIGAMI
「せやけど、お前の身体はたしかにただのゾンビやで」
勇者
「たしかに、五ヶ月ぐらい風呂に入られへんかった匂いはするけどな」
SINIGAMI
「……五ヶ月も入らんかったって、風呂キャンも大概やな」
勇者
「何日も魔王城を探してさまよっとったら、いつの間にかそれくらいキャンセルさせられたんや」
SINIGAMI
「さよか。まあええわ。とにかく、お前はゾンビになりました、ちゅうわけや。このままやと、身も心もゾンビ化して、思考とかもなくなっていくねん」
勇者
「どないしたらええんや? オレはこんなところで人生終わりたくないで」
SINIGAMI
「せやろ? そない思ってな。チャンスをやろうと思ったんや」
勇者
「マジで?」
SINIGAMI
「ほな。ルールを説明するで」
SINIGAMIは、ここが地獄の地下五〇〇〇階だと説明し始めました。
ここから勇者は、最弱な状態でスタートいたします。
敵を蹴散らしながら各フロアを攻略していき、ダンジョンを上に上にと進むのです。
勇者
「時間制限は?」
SINIGAMI
「ないで」
勇者が地獄にいる間、地上は時が止まったままでございます。
ですが、勇者の仲間は蘇生ができずに、ずっと困っております。
最上階まで上がって無事に魂が戻れば、勇者は晴れて復活となるのです。
SINIGAMI
「最上階にたどり着いたら、元の人間に戻れるで」
勇者
「やったぜ」
SINIGAMI
「喜ぶんは、早いで。勇者。お前の力を奪ったボスが、行く手を阻んどる」
そのボスたちを倒し、最上階にいる魔王の魂を倒せば、見事クリアーとなります。
SINIGAMI
「ワシは、魔王の魂を連れて返ってくるように言われとるんやけど、魔物に阻まれてこの通りオケラっちゅうわけや。ワシに戦う力はない。代わりに戦ってくれ」
勇者
「あーっ。つまり『ハ●ス』やね」
SINIGAMI
「ゲームの具体名、言うのんやめてな」
勇者
「よっしゃ。さっさと終わらしたらぁ」
SINIGAMI
「武器もないのに、出撃かいな?」
勇者
「せやった! 一番ええのを頼むで」
死神は、武器を渡してあげます。剣、槍、弓、拳法ってのもあります。
SINIGAMI
「渡せるんはどれか一つや」
勇者
「ますます、『ハデ●』やないかい」
SINIGAMI
「せやから、具体名上げるのやめんかいっ」
勇者は武器を手にします。
勇者
「ほな、生前でも使った剣でやったる」
SINIGAMI
「ただし気をつけや。時間制限はないっていうたけど、ダンジョンの途中でやられたら最初のフロアからやで。手に入れたスキルも、没収やさかい」
勇者
「オレがやられるか、っちゅーねん」
SINIGAMI
「勇者。お前は、ノースキル状態やねんで。敵を甘く見たらあかんよってに」
勇者
「まあ見とけ。RTAばりに最速クリアしたるさかい」
SINIGAMI
「最速で死なんことを、祈ってるで。ほな、行っといで」
さすが勇者、ダンジョンへと勇ましく立ち向かいます。
自分と同じゾンビやスケルトンが、最初の敵でした。
あっさりと撃破いたします。そこは勇者でございました。
勇者
「なんや。たいしたことないやんけ! ビビらしよってからに!」
勇者は昔のカンを取り戻しながら、敵をぶっ倒していきます。
数が多かろうと、ものともしません。
勇者
「よっしゃ。フロアクリア! ん? 出口につながる扉が、二つ出てきたぞ」
右の扉は、ステータスアップができます。
左の道は、スキルを取り戻せる扉につながっております。
勇者
「能力値なんざ、当分上げんでもええやろ。このまま突っ込んだる!」
ステータスアップを無視して、ドンドンとスキルを強くするルートばかりを選びました。
とはいえ、しょせんはゾンビの身体。動きも鈍く、攻撃力も弱いままです。相手の攻撃を食らう場面が、目立ち始めました。
それでも、勇者は勝ち続け、ダンジョンのフロアを突き進んでいきます。
勇者
「どないや! 攻撃は最大の防御なんじゃ! 見とけよオラ! 今に――」
しかし、最初のボスの手によって、負けてしまいました。
気づいたら、最初のフロアでございます。
SINIGAMI
「ヒヒヒ。お早いお帰りで」
勇者
「じゃかあっしゃい。油断しただけやんけ」
SINIGAMI
「言うたがな。敵は手強いねんでって」
フロアは最初からスタートとなりました。ですがここは、ローグライトのルールでございます。
チェックポイントまで到達したので、なくなったスキルやステータスは、一応引き継がれました。しかし、強かったスキルなどは、没収されてしまっています。
勇者
「なんでこう、体力回復のタイミングがないんや!」
SINIGAMI
「あるかいな。地獄やねんで、ここは。ステータスで、死ににくくするしかないんやで」
勇者
「ステータスも気を遣わんとアカンのかいな。やむを得ん。今後は能力値も目安に入れんと」
考えを改めた勇者は、体力のリソースを考慮して、安全策を取ります。
ステータスアップ系を取っていきました。
するとどうでしょう、目玉の回りに皮膚ができ始めたではありませんか。
勇者
「おっ、肉体がちょっとだけ元に戻ってきた気がするで。ステータスアップには、こういう効果があったんかい」
やる気が出た勇者は、その勢いのまま最初のステージをクリアいたしました。
勇者
「ほれみい! オレが負けるなんて、気のせいやったんや! おっ、新しいステージに上ったで」
このダンジョンは、各階層ごとに分かれております。
階層を上がっていくごとに、景色も仕掛けも敵も変わるのでございます。
勇者
「次は海洋エリアかいな」
渦潮でステージをワープするという、めんどくさい仕様でございます。
乏しい脳みそを駆使して、勇者はボスのフロアを目指しました。
しかし、次の海洋エリアのボスにやられてしまいます。
SINIGAMI
「お早いお帰りで」
勇者
「じゃかあっしゃい。武器が通じへんかってん」
SINIGAMI
「ボスの弱点に合わせて、武器を変えんと!」
勇者
「そんな仕様なんかい」
今まで剣一本で戦ってきた勇者、気持ちを切り替えて槍に持ち替えます。
勇者
「剣のレベルが一からとか、イケズせえへんよな?」
SINIGAMI
「武器の強さは、今まで取ってきたスキルやステータスで共有するさかい。攻撃力自体は剣とあんま変わらんよ」
勇者
「よっしゃ。せやけど、あの渦潮に飲まれるワープをまたこなさんとあかんのかいっ」
海洋エリア、どうにかクリアいたしました。
次のエリアも、その次のエリアも、勇者は着実にクリアしていきました。
勇者
「攻撃のエフェクトやらが、派手っすね!」
SINIGAMI
「派手っす!」
チェックポイントという場所も、通過いたします。
体力も、ほんのちょっとだけ回復しました。
その効果を活かして、勇者はぐんぐんと進んでいきます。
とはいえ、ここはローグライトな世界観。
死に戻りは発生いたします。
勇者
「ぜえ、ぜえ、どこまで続くねんな? ここは」
SINIGAMI
「もうちょいでゴールやで」
勇者
「身体もだいぶもとに戻ってるさかい、最上階のボスとか、ちょちょいのちょいやろうが」
SINIGAMI
「えらい自信でんなぁ。そんなんやと、またさっきみたいに足元すくわれるで」
勇者
「わかっとるわい。慎重に慎重を重ねて、オレは攻略していくんや。ほら、ゴールが見えてきたで……なんやあれは!? オレがもうひとりおるやないか!」
なんとラスボスは、勇者に成り代わろうとしている魔王なのでありました。
勇者
「しばくぞ、お前! それはオレの身体や! 返してもらうで!」
魔王
「お前の時代は、終わったんじゃ。これからはオレが勇者となって、お前んところのパーティの女の子とイチャつくんや。邪魔せんといてんか?」
勇者
「邪魔なんは、お前のほうじゃ! もういっぺん死ね!」
勇者と、勇者の力を得た魔王は、互角の戦いでした。
スキルやステータスは、勇者が取り返しております。
しかし、魔王は素の強さがとてつもなく、勇者も苦戦しておりました。
勇者
「なんでコイツ、ダメージを与えられへんのや? オレはゾンビ化も解消されて、聖属性を出せるようになっとるさかい、攻撃は通るはずやのに!」
SINIGAMI
「チートや! 魔王のやつ、チートコードを使っとる!」
なりふり構わぬ魔王は、なんと禁断の秘術【チートコード】を使って、無敵になっているのでした。
勇者
「セッコ! 天下の魔王たるもの、やることセコいんじゃボケ!」
怒りに燃える勇者は、SINIGAMIの協力を得て、魔王のチートコードをかき消したのでした。
勇者
「これでもくらえ!」
魔王
「ぎゃあああ! せやけど絶対、また蘇ったるさかいな! 続編で!」
勇者
「人気出てから続編とか言えや、ボケェ!」
魔王の断末魔が轟くなか、とうとう勇者は自分の力を取り戻したのでした。
勇者
「よっしゃ! 蘇ったで!」
見慣れた地上に戻って、勇者はシャバの空気を満喫します。
勇者
「あのダンジョンは、どないなってん」
SINIGAMI
「消えたで。おおきに。これでワシは契約通り、魔王の魂をあの世へ連れて帰るよってに」
勇者
「当然や。魔王の企みは、ローグライクがええ。『死んだら最初から』やないとな」
SINIGAMI
「まあ、復活することもないやろ。なんせチートとか使いよったさかい、消えとるはずや」
勇者
「魔王の存在が、かいな?」
SINIGAMI
「せや。アカウントがな」
新約 死神 ~ローグライトダンジョン脱出落語~ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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