第7話 人間の姿のムギと過ごす最後の時間

//SE ドアが開く音

//SE ドアが閉まる音


「ふぅ~。お昼に食べたパスタも夜に食べた回るお寿司もすっごく美味しかったにゃ~」


「ショッピングもゲームセンターも楽しくて最高の一日だったにゃ」


「帽子被ってロングスカート履いちゃえば、猫耳もお尻尾も気にならなくて良かったにゃ」


「ご主人様。ムギのためにいろいろと準備してくれて本当にありがとうにゃ」


//SE 衣擦れの音(主人公に抱きつくムギ)


「お外、寒かったからぎゅってすると温かいにゃ」

 (ここからの会話は近い距離)


//SE 主人公はムギの頭を撫でる


「今日は最高の思い出になったにゃ」


「でも、ご主人様とこうしてお話しできるのもあと少しにゃ……」


「猫の時も楽しかったけど、やっぱりご主人様とお話できたのは嬉しかったにゃ」


「ご主人様と過ごした時間と、一緒に食べたご飯の味は、猫の姿に戻っても一生忘れないにゃ」


//SE 衣擦れの音(主人公から離れるムギ)


「ムギね、産まれて少ししてからママと離されてペットショップで売られたにゃ」


「ペットショップの環境もあまりよくなかったけど、ムギを買ってくれた前のご主人様が……」


(しばらく沈黙するムギ)


//SE 主人公がムギの頭を優しく撫でる


「ムギを叩いたり、酷いことをしてきて……。最後にムギは段ボールに入れられて……」

 (震えるムギの声)


「捨てられたんだにゃ」


「……雨が降ってて、すごく寒くて……つらくて……最後の力を振り絞って助けを呼んだにゃ」


「そんな時にご主人様がムギを見つけてくれて……ムギを救ってくれたんだにゃ」


「治療してもらって元気になったムギだけど、最初はご主人様に威嚇したり、手を噛んだりして、すごく困らせたと思うにゃ……」


「それてもご主人様は諦めることなく、根気よくムギの面倒を見てくれて……たくさん愛情をくれたにゃ」


「きっとあの時にご主人様に助けてもらえてなかったらムギは死んでいたにゃ。……ご主人様はムギの命の恩人にゃ」


「だからこうやって人間の姿になって、少しでも恩返しができてよかったにゃ」


「でも最後は恩返しのこと忘れて……一緒に楽しんじゃったにゃ」

 (くすくすと笑う)


「ご主人様がムギの嬉しいことをたくさんしてくれたから……。やっぱりご主人様はすごいなぁ」

 (泣きそうに笑うムギ)


「ふふふ……そっか。人間の姿でしか味わえないこと、ムギのためにいろいろ考えてくれたのにゃ?」


//SE 衣擦れの音(主人公に抱きつくムギ)


「こうやって、ご主人様のことぎゅーってできるのも今だけにゃ……」

 (再び近くなる声)


//SE 重なる鼓動


「人間の姿になって、ご主人様と話せるようになって、ちょっとだけ後悔したことがあるにゃ」


「好きって以上の……胸が苦しくなるくらいの愛しい感情……。それを知っちゃったから……」


「毎分、毎秒、好きになっていくのにゃ……」


//SE 背伸びをして主人公の頬にキスをする


「ご主人様。大好きにゃ」


「ムギは死ぬまでずっとご主人様のそばにいるにゃ」


「きっとこの先、ご主人様にはもっと大切な人が現れるから……。ムギはご主人様の幸せを誰よりも願ってるにゃ」


//SE 衣擦れの音(主人公から離れるムギ)


「もうすぐで時間にゃ。……とりあえずこの姿ではお別れにゃ」

 (涙ぐむムギ)


「ご主人様。少しだけ外に出てくれると嬉しいにゃ」


「猫の姿に戻ったらちゃんとまたお出迎えしたいにゃ」


「それに、元の姿に戻るところを見られるのもなんだか恥ずかしいにゃ」


「ご主人様、ありがとうにゃ」


「ふふふ。コンビニでキャットフード買ってきてくれるにゃ?」


「じゃあ、美味しいおやつも。楽しみにしてるにゃ」


//SE ドアの開閉の音

 (寂しく響く)


       *******


//SE ドアの開閉の音


//SE 部屋の奥から近づいてくる足音


//SE 鈴の音


「ご主人様! お帰りにゃさい!」


//SE スカートがはためく音

//SE 主人公に飛びつくムギ


//SE 主人公は尻餅をつくと同時に、コンビニで買ってきた物を床にぶちまける(ビニール袋の音。キャットフード缶がカラカラと音をたてる)


「ご主人様。ご主人様ぁ」

 (涙を滲ませながら)


//SE 耳と尻尾を嬉しそうに動かしながら、主人公に頬擦りするムギ


「ムギが良い子にしてたから、神様が特別にもう少しだけ人間の姿でいていいよって言ってくれたにゃ」


//SE 衣擦れの音(主人公に抱きつくムギ)


「ねぇ、ご主人様。あと少しだけ、この姿でご主人様にご奉仕させてくださいにゃ」


//SE 主人公もムギの身体を抱き寄せる


「ふふふ。ご主人様大好き」


「ムギの愛情いっぱい伝えるから、もっとも~っと覚悟してて欲しいにゃ」




        ――終――



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にゃんこメイドはご主人様に恩返しがしたい!~その先に待ち受けていたのはふわもふに甘やかしてくれる極上ライフ~ 黒猫鈴音 @kurosi_

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