「黒い羽根が舞ったなら

あらいぐまの図書館

第1話:夕焼けと鳥

__からすと いっしょに かえりましょ


目が痛くなるほどのオレンジで満たされた、とある夕方のことだった。


「ねぇ水希、この先の神社でお願い事をすると絶対叶うんだって!一緒に行こ!」


そうやって私に笑いかけるこの少女は黒羽 ゆらら。クラスで一番人気な女の子。

同じ教室にいて、彼女に笑いかけられて好きにならない人間などいないだろう。

私とてその1人だ。


『ゆららは叶えたいお願いがあるの?』

「…うん!えっと〜…って、こういうのって言っちゃうと叶わないんだっけ!?でも絶対叶うところだから言っても大丈夫…??」

『無理せずでいいよ?…うーん、じゃあ叶ったら教えてよ。』

「えへへ。じゃあお願い事叶ったら、一番に水希に言うね!」


…この子の笑顔はほんとに可愛いなぁ。ずっと、私だけに向けていてほしい。


「水希は何お願いするか決まった?」

『あ…どーしよ、決まってないかも』

「そっかぁ〜。まだ着くまで時間あるから…着くまでに一緒に考えよ!」

『…ふふ、ありがと。』


そこから暫く歩いて、鳥居をくぐり、長い階段を登った先。

__ふわっと風が吹く。風が髪を靡かせた。



綺麗な彼女を前に、瞬きをした。

次に目を開けた時には彼女の姿がなかった。

その代わりと言わんばかりに、彼女のつけていた髪飾りが地面に落ちていた。




「ねぇ、もう帰らなきゃだめだよ?もうカラスはいないんだから」


何処からか声がする。

__わからない

凛とした、綺麗な声。

__眩暈がする

まるで"彼女"と同じような。

__いたい


意識を手放す瞬間に一つだけわかったことは

あんなに明るく輝いていた太陽はもう沈みかけていたということだ。

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