「照らされた影」

人一

「照らされた影」

「ねぇ、知ってる?演劇部の十長さんついに主演が決まったんだって!」

「ほんとに?すごいなぁ。でも、あの子めっちゃ頑張ってたもんね〜」


誰の目にも、彼女が努力してきたことは明らかだった。

観客からも、舞台袖のスタッフにも。

そしてもちろん、彼女自身にも自覚はあっただろう。

それが――次期主演女優十長だった。


そんな彼女も失敗はするが、それでもやはり周りに支えられ着実に成長していく。


他愛のない日々が瞬く間に過ぎていき、気づくと本番前日のリハーサル日。

これまで通りの手順で、劇を進行していく一幕。

小道具の配置、セリフや進行の確認が済んだので次はクライマックスの確認をする。

「十長さんの、ラストスポットライト点灯しまーす!」

バタンと照明が落ちホールは暗闇に包まれるが、すぐに1本の光の筋が十長を照らす。

いくつにも伸びる影が彼女の存在を際立てていた。

照明も問題ないようで、スムーズに確認作業が進んでいきリハーサルも無事終了した。

「明日はこれまでの積み重ねを披露する日。絶対に失敗できない。みんな頑張ろう!」

この演劇部の結束が一段と強くなった気がする。

彼女の号令と共にこの日は解散した。


そしていよいよ演劇本番。

「じゃあみんな!今日は頑張ろう、そして楽しもう!」

彼女の号令で演劇は始まった。

舞台で輝く彼女と慌ただしく動き回る裏方。みんなで一丸となってこの劇を作り上げているのだ。


いよいよ劇もクライマックスに差し掛かる。予定通り照明を落とす。

――ガタン

……?マイクでも落としたのだろうか。でも彼女なら上手いことリカバリーできるだろう。

観客の期待も最高潮のこの瞬間、スポットライトで、舞台の彼女を照らす。


……だがそこに、スポットライトで照らされた世界に彼女はいなかった。

瞬く間に消えてしまった。

劇を中断してどれだけ探しても……姿はない。

乱雑に落ちたマイクが転がっているだけだ

ただただ、舞台の床に焼きついた影だけが彼女の存在を証明していた。

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「照らされた影」 人一 @hitoHito93

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