8.夏は溶けている
毎日に一本は食べるし、
一番暑い時間に舐めているから、
もう夏だよね。
今日も、長い飛行機雲が青空に伸びている。
ぼくの背中の汗みたいに、
べっとりと空にすがっている。
ぼくは、夏で溶けているみたい。
ぼくも溶けるならぼくはアイスだ。
アイスが夏なら、ぼくも夏だ。
お父さんとお母さんは夜までお仕事。
ぼくは独りでアイスをぺろぺろして、
昨日の嫌な思い出を考えている。
夏の風物詩だからね。
ぼくは歪な本を燃やしたのだ。
きみに言った肉々しい本の事だよ。
庭で燃やしたね。
ぼくは縁側に座って引き裂いた。
無残にも全てのページを一枚ずつ裂いて、
とても気持ちよかった。
この子も悲しそうに泣いていてね。
「きみは最も残酷な人種だ。有史以来最悪の人間だ。」ってね。
ぼくはご丁寧に一枚ずつ破いたよ、
それを火桶に投げ入れて。
とても蒸し暑い昼だけど、
気味が悪いから背筋はひんやりしていたよ。
「ぼくの人生にきみはいらない」
「確かにきみに欲望はあった。永遠にアイスを舐めたい欲望が。しかし今はどうだ」
「もうないよ」
「どうしてだ」
「わからない」
「酷い人間だ」
「そうだよね」
「きみこそ死ぬべきだ」
「ぼくも同じ意見だよ」
裂いて裂いて火鉢に入れる。
ひらりはらりと舞う火の粉は、
精霊になって夜空にへと飛ばされる。
ぼくって酷い人間と言われたけど、そうかな。
でも朝になると、本は何事もないように棚にある。
ぼくはその子を抱えて、縁側でアイスを舐める。
明日も明後日も一年後の今日も、
冬になったら、大学が始まったらさすがにできない、
でもこの瞬間は、一番罪悪感があって楽しい。
気づけばアイスは無くなっていて、
飛行機雲は消えている。
べっとりと気持ち悪い汗だけが体にしがみつき、
ぼくを貫こうと待っている。
ナイフを持って。火を点けて。
本を持って。見開いて。裂いて、裂いて。
この子が泣いだって、ぼくは裂いて、裂いて。
「ドアのベルが鳴っているよ」
「そうだね。ありがとう」
庭から玄関へと外から回る。
そこに大きな段ボールが置いてあって、
ぼくはナイフで箱を開ける。
「あぁ、真っ赤なトマトだった」
夏から帰るとき、ぼくはいないからね 聖心さくら @5503
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