いつかみんなで

「……は〜い。カメラテストおっけー。撮る前に、一回メイク直そうか。」


「アッキー、こだわりすぎじゃない?張り切りすぎると、ゲストが疲れちゃうよ?」


「ユッコは黙ってて。監督は私よ。中途半端は許さないわ。」


「何で今日は鬼監督演出なのよ。」


「ヨミーが石上さんを捕まえられなかったから、予定がズレたのよ。責任とってヨミーには頑張ってもらうからね。」


「石上さんは仕事だって言ってたじゃない。読子のせいじゃないでしょ?」


「絶対嘘よ。先生に事前に確認して、今日は石上さん空いてるの知ってるんだから。ビビって逃げたに違いないわ。」

 

「由紀子さん、私は平気ですから……監督の指示に従いましょう……。でも明美さん、あの……ちょっと、この衣装恥ずかしいので……早くお願いします。」


「ヨミー。そんなんじゃ、次世代のスターになれないわ。セーラー服にネコミミくらい、我慢しなさい。」


「てか、石上さんにもネコミミつけるつもりだったの?」


「あの人は顔出し着ぐるみよ。ほら、前に学祭で使ったやつ。借りてあったの。」


「それ、石上さんに事前に伝えたの?」


「もちろんよ。演者に許諾を得るのは当然じゃない。昨日の夜思いついて、急遽メールで伝えたわ。」


「だから逃げたんだよ。アッキーのせいじゃん。」


「うるさい。まさか逃げるとは思わなかったのよ。」


「あの……お二人とも。向こうに並んでる見物人も増えてきたので……そろそろ進めませんか?この衣装、スカートの丈が……その……。」


「いい、ヨミー。ダンスに合わせて、スカートの長さは計算済みよ。どれだけ踊っても、転ばない限りは大丈夫。見えないわ。安心して。」


「いえ……そう言う問題じゃ……。」


「はいはい、読子をからかわないの。ほら、確かに目立ち始めちゃったし、早くやろ。サビの前からで良いんでしょ?私たちも位置に着くよ。」


「くっ……仕方ない。ヨミーがセンターのバージョンからいくわよ。うちらはバックダンサー。

 振り付け、大丈夫?いい?正確さやリズム感も大事だけど、思い切りが大切だからね?自分の感情を、思い切り表現するの。頑張ってね、読子。」


「は、はいっ!監督!」


「あんたら、そのコントいつまでやるつもり?ああもう、曲流すわよ?」


「待ってって!……はい、よし!じゃあ、曲流して。三人でいくわよ。カメラ、スタート!」


「…………あ〜♪ 君とつないだ〜この手を〜離したくはない〜♪ いつだって〜君は〜僕の〜大切な〜…………

 って、何で二人とも踊ってないんですか!」


「あはははははっ!」

 

「読子、かわいい!」


 ……今日の撮影は、中々終わりそうに無かった。

 

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学園の獣 taktak @takakg

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