灼熱の音
沖方
灼熱の音
その音を その声を 名もなき誰かに届けたい
誰も知らない世界で 誰も覚えていない世界で
僕たちは奏でるのだ
望まれなくても 愛されなくても
僕はただ、音を愛すのだ
伝えたいのだ 聞いてもらえなくてもいいのだ
ただ、ただ、誰かに届けたい
歌いたいですか
弾きたいですか
吹きたいですか
叩きたいですか
何をしたいですか
「僕はただ、届いて欲しいんだ」
「僕たちはただ、ただ──届けたいんだ」
この声を この音を 大切なあの人に届けたい
皆が生きている世界で 皆が忘れた世界で
僕たちは奏でよう
僕は走り回る 君のためにこの世界を
僕はただ、奏でるのだ
届けたいのだ 全てを救えないなんて分かっているのだ
ただ、ただ、君に届けたい
聞いていますか
届いていますか
見えていますか
伝わっていますか
伝えなくちゃダメでしょうか
「僕はただ、届けたいんだ」
「僕たちはただ、ただ──届いて欲しいだけなんだ」
この手で世界を救うのだ
拙い音で 拙い声で 拙い音楽で
それでも僕は世界を救いたいと願った
この手で君を救いたいのだ
不器用な指で 力のない足で 小さな思い出を糧にして
それでも僕は君を救いたいと願った
一人だけではダメだった
独りぼっちの音楽なんてあるはずもなくて
皆で奏でよう 皆の音を伝えよう
そうあの日、約束を交わした
ただ、約束を守るためだけのこと
世界を救いたいなんて高尚なこと
君に届けたいなんてわがままなこと
この手でできることなんて たかが知れているのだ
そんなこと、分かっているのだ
だから僕は──この灼熱で世界を救うんだ
灼熱の音 沖方 @okikata28
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