Out of Space/EP2『星間戦争』

宮本 賢治

第2話『星間戦争』

クリーム色の毛色。

大きな丸い玉が2つ。頭と胴体。

それに短い手足。

そして、フサフサのシッポ。

「ニャア〜♪」

ミルキーが鳴いた。

頬を撫でると、目をつむり、体を寄せて甘えてくる。

ミルキーは子どものころからの友だち。ずっと一緒だった。

けど、もう一緒にはいられないのかもしれない。

大きな爆発音と、宮殿全体を揺らす振動が同時に起きた。

ミルキーがビクッと体を震わせた。

「大丈夫、ミルキー。

大丈夫だよ」

ぼくは、自分自身にいい聞かせるように優しくいった。

無駄にだだっ広い部屋。背もたれのついた椅子が一脚あるだけの殺風景な空間。

扉が開き、現れたのはヘレンだった。ぼくの教母であり、この星、最強の魔女。

「ポール様。

帝国軍が宮殿に侵入しました。

この地下シェルターに到達するのも、時間の問題でしょう」

いつものように、冷静な口調。

ヘレンは黒いゼイド布のローブをまとい、フードを深くかぶっている。

子どものころから、ヘレンの容姿は変わらない。若くて美しいまま。

「しかたない。

ぼくが投降しよう。

遅すぎた。

もっと、早くそうしておけば、ここまての被害は出なかった」

ぼくが立ち上がり、歩を進めようとしたら、ヘレンが立ちふさがった。

「なりません!!」

ヘレンの強い口調。

初めて聞いた。

ヘレンが続けた。

「ポール様が最後の望み。

あなたを帝国に渡すわけにはいきません。

皇帝に仕える魔女はわたしの実の姉。あなたを自由に操り、銀河のすべての星が帝国になびくように先導するでしょう。

そうすれば、銀河はあの悪しき皇帝のものになってしまいます」

「では、どうすれば!」

ぼくがヘレンに問いかけたとき、爆音とともに部屋の扉が吹き飛んだ。

ブラスター·ライフルを持ち、装甲服を着た、帝国軍の機動歩兵たちが侵入してきた。

ヘレンが目をつむった。

見開くと、空気が変わった。

ズシンと重い空気に押される感覚があった。ヘレンが口を開く。


『 止まりなさい!! 』


聞いたことのない低い声。

機動歩兵たちは動きを止める。

ヘレンの声に従っている。

その声は耳に届いているのではなく、頭に直接語りかけているようだった。


『 構え 』 


10人以上の歩兵。その全員がブラスターの銃口を自分のあごに当てた。


『 撃て! 』


歩兵たちは、ヘレンにいわれるまままに従いブラスターの引き金をしぼり、自らを撃ち抜いた。

歩兵たちがくずれて、倒れる。

恐るべき、魔女の魔法。

ヘレンはぼくの手から、ミルキーを引き離した。

そういえば、ミルキーを連れてきたのも、ヘレンだった。

「あなたと、ミルキーの魂を入れ替えます。

ミルキーの魂を宿した、ポール様の肉体を帝国に渡します。

帝国の魔女がいずれ気づくでしょうが、時間は稼げます」

あまりの唐突な作戦に、ぼくは何もいえなかった。

ヘレンが続ける。

「ミルキーは、時空を越える能力を持っています。

わたしたちの知らない、銀河の果てへ逃げて、ポール。

状況を見据え、時期を見て呼び戻します」

ミルキーがぼくを見て、鳴いた。

「ニャア〜♪」


ニャ!!!

飛び起きると、ユイの膝の上だった。ソファの上でユイは寝ていた。

ボクはミルクティー。

ユイに拾われた。

拾われる前は何をしてたのだろう。

思い出せない。

「ユイ、ミルク、ゴハンできたよ」

キッチンからタカシの声がした。

ボクはユイの膝から飛び出し、キッチンに走った。

「タカシ、今日のゴハンは何?」

タカシの背中、ワナワナと震えている。

振り向くタカシ、鬼のような顔。

「ミルク!!

さんをつけろよ、デコスケ野郎!」

叫ぶタカシ。

呼び捨てが気に入らないらしい。

ちっちゃい人間だ。

おびえたフリをして、ムニャムニャいってるユイの胸に飛び込む。

ユイの胸はやわらかくて、温かい。

「も〜、家族なんだから、呼び捨てでいいじゃん。

ね〜、ミルク〜♪」

ユイはボクを持ち上げて、頬ずりしてくれた。

タカシが、人間の子ども用の椅子を用意してくれた。これでボクもみんなと同じ食卓につける。

もう、美味しくないキャットフードは懲り懲り。

タカシのゴハンは美味しい。

みんなで食べると、スゴく美味しい。

今日のゴハンはアジフライ。

ボクの大好物♡

タカシは食べやすいように、ボクの分は小さくカットしてくれている。

この時期のアジは脂がのって最高なのニャ♪

みんなそろって、

「いただきま〜す!」


何か大切なこと忘れてる気がする。

でも、今は幸せが忙しい。


EP3へ続く😺⭐✨

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