最終話 冷めないラーメン
試験の翌週。
神山一徹は会社に「審査員辞任届」を提出していた。
本社役員は騒然としたが、ただ一通のメモが残されていた。
> 『ラーメンに気持ちを込めればお客様に必ず伝わる。』
その頃篠田は静岡南店で、いつも通り朝の仕込みをしていた。
そこへ、ひとりの若い男性客が入ってくる。
それは──役目を終えた神山一徹だった。
「……ご来店ありがとうございます。また熱いうちに、お出しします」
二人は言葉少なに笑った。
「お待たせ致しました。特性ラーメンです」
篠田は笑顔でラーメンを出す。
神山は静かに、時間をかけてラーメンを噛み締めるように食べる。
最後のスープを全て飲み切り神山は言った。
「篠田さんのラーメン、やっぱり冷めないですね。美味しかったです。」
かつて鬼とまで呼ばれた神山は純粋なラーメン好きに戻っていると篠田は感じた。
厨房には今日も湯気が立ち、“熱”が生まれていく──。
完
あとがき
いつも美味しく頂くラーメン。そこには開発者、店舗で調理し提供する人達の想いが込められている。
その想いをこのお話を通じて感じてもらえたら嬉しく思います
作 はいよろこんで
チェーン店の鬼 koko @haiyorokonde
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