さようならイボ痔さん

桜井もみじ☆

さようならイボ痔さん

さようならイボ痔さん

桜井もみじ☆


 オレはイボ痔。

 この女のケツの穴に二十年も住んでいる。超ベテランのイボ痔だ。パチンコ玉よりデカいんだぜ?

 このケツの事ならなんでも知っている。


 それはある日突然の事だった。


 女は肛門科の病院へ行った。

 そしたら医者のヤローが言ったんだ。

「このままでは危険です」

 そしてオレはケツの穴から追い出されちまうことになったのさ。


 医者のヤローはオレを縛り付けた。

「こうしてレーズンみたいにして、カピカピになったらになったら、自然に取れるんですよ」


 苦しかった。痛かった。つらかった。

 どうしてオレをこんなふうに縛り付けて、ケツの穴から追い出そうとするんだ。

 オレとはもう二十年の付き合いじゃないか。

 どうして今更、オレを追い出したりするんだよ。オレ達、兄弟みたいなもんだと思ってたのに。


 お前に分かるか?

 体に血が回らなくなっていく、この感覚が。感触が。

 お前に分かるか? この恐怖。

 どんどん小さくなっていく、この体。足元がなくなっていく、この悲しみが。


 時は来た。

 カピカピになったオレは、どんどん足元から腐り落ちていくのを感じた。

 女は喜んだよ。俺がいなくなっていくのを。

 うんこに押し出されて、俺は便器に落ちて行った。


 ぽちゃん。


 でもいいんだ。

 オレがいなくなる事で、女の便秘が治るのなら。

 オレの兄弟が健康になるのなら。


 女は最後にこう言った。

「さようなら、イボ痔さん」


 オレにはお似合いの最後だろ?


 こうしてオレは、孤独になった。寂しいもんさ、一人ってのは。

 さようなら、便秘の女。元気でやれよ。

 オレとお前、今からは別々の道を歩むのさ。また、道が一つになる日も来るかもな。

 それまで、さようならだ。


 女はもう一度呟いた。

「さようならイボ痔さん」


fine.

2025/01/13

桜井もみじ☆

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さようならイボ痔さん 桜井もみじ☆ @taiyou705

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