その101:最終奥義、最初で最後の言葉にする日!
目の前にいるのは、何度もツンとすれ違って、
何度もデレで抱きしめ直した――そんな大切な人。
「かな」
呼びかけると、夏奈はいつものようにぷいっと視線を外した。
「なによ。どうせまた、あんたの甘ったるい台詞でしょ」
だけど今日は違う。今日は――
「違うよ。今日は、最後の技なんだよ」
静かな部屋。窓の外では春が遠ざかっていく。
ほんの少し涼しい風が、カーテンを揺らした。
「……なんで、そんな顔してるの」
夏奈の声が小さくなる。
「ずっと言いたかったこと、あるんでしょ?」
「……ある」
「……言えば?」
「……言っていい?」
「……うん」
私は深く息を吸った。
「出会ったときから、全部好きだったよ」
「……ばか」
「ツンツンしてるとこも、焦ってる顔も、頬染めながら目を逸らすとこも、ぜんぶ」
「やめて……///」
「かなが笑った日、泣いた日、怒った日。私に抱きついてきた日、抱き返してくれた日」
「……っ、やめろよ……っ」
「これからも、毎日、かなの隣で寝て、起きて、手をつないで、キスして、言い合いして、またキスして」
「………………」
「“好き”って言い続けて、“愛してる”を増やしていくの」
「……………」
そして――
私は小さな箱を取り出した。
「だから、これが……私の最後の技」
パカッと開いた箱の中。
そこには、細い銀のリングがふたつ。
どちらにも、小さく「S」と「K」の刻印。
夏奈の目が見開かれる。頬が紅潮し、唇が震える。
「……ばか」
「うん」
「こんなの……絶対断れないじゃん……」
「うん、知ってる」
そして――
夏奈が、涙をこらえながら言った。
「……じゃあ、言う。全部言うから、聞いて」
紗帆は黙って頷いた。
夏奈は、深く息を吐いて、まるで意を決したように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「最初はさ、あんたのこと、うるさくて、馴れ馴れしくて、正直ちょっと苦手だったの」
「うん、知ってる」
「でも、いつも見てたんだよ。
あたしの顔を見て、笑ってくれたとき。
無防備に甘えてきたとき。
ちょっと大胆すぎるときもあったけど……なんか、さ。
“こんなに好きになっちゃいけない”って思うくらい、あんたばっかり、目に入るようになってた」
「……かな」
「うるさい。最後まで言わせろ」
照れ隠しのその一言も、今日は優しすぎて、笑ってしまいそうになる。
「ほんとはね、あたし……あんたのこと、ずっと羨ましかったんだよ」
「え……?」
「好きって、まっすぐ言えて。
手も、キスも、あたしより先にしてきて。
臆病なの、バレてたよね……ずっと」
「……うん、でも、それが可愛かったんだよ」
「ばっか。最後まで可愛いって言うな……
でもさ、今だけは言わせて」
夏奈は、少しだけ顔を上げた。
頬を赤らめて、それでも真剣に、まっすぐに紗帆を見る。
「――あたし、紗帆がいないとダメなの。
あんたの笑い声がないと、眠れないくらい。
朝、あんたが隣にいないと、不安になるくらい。
触れてないと、寂しくて仕方ないくらい」
「……っ」
「紗帆の全部が、好き。
ツンでもデレでも、全部奪ったって言うけど――
奪ったのは、あんたのほうだよ。
あたしの“好きじゃないふり”とか、
“照れ隠し”とか、
“強がり”とか……あんたが全部、溶かしてった」
「……そっか」
「だから、もうツンデレなんて名乗れないくらい、好きなんだよ。
世界一、紗帆が好き。
あたしを、“かなちゃん”って呼ぶ声が、
あたしを、“好き”って見つめる目が、
あたしを、全部溶かして、幸せにするんだ」
紗帆の頬に、ぽろりと涙が落ちた。
でも、それは悲しい涙じゃない。
もう、何も言わなくてもいいくらいの――“満たされた涙”。
そして。
「……じゃあ、そろそろキスしていい?」
「バカ……もう遅いんだよ」
次の瞬間、唇が重なる。
すべてを分かち合ったふたりに、言葉はいらない。
これは、“最初で最後のツンデレ攻略”だった。
けれど、ふたりの物語はここからが、本当の始まり。
『技その101:最終技・あなたが全部奪ったの』
→ ツンとデレ、そして“愛”の全開放。もう技なんていらない。
成功度:最終到達、ハッピーエンド超えのハッピーライフ♡
次の更新予定
毎日 18:30 予定は変更される可能性があります
ツンデレを堕とす100の技! 通りすがり @-141421356-
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