第31話 ノスタルジア

『お耳が大きいから、たくさん聞こえそう。今日からあなたはウサギのキクよ!』


 ようやくふみちゃんの側に戻ってこれた。ごはんを食べて寝るだけの忙しい日々。おつかいやちょっとした冒険をすることもない。あのちっちゃい神社での不思議な日々は全然懐かしくない。というと嘘になっちゃうけど、やっぱりこっちの方が良いな。だって、誰もあたしのことを名前で呼んでくれなかったんだもん。

 物心がついたときから呼ばれていたし、これからもずっとあたしはウサギのキク。かけっこはすきだけど、もう二度とふみちゃんとぶつかって、おかしな夏の日を過ごすことはない…と良いなぁ。


 明日はおっきい方の神社でお祭りがあるみたい。もうぶつかったりしないよ。たぶんね。

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